夏の甲子園で“本物”だったドラフト候補10人
熱戦が続く第104回全国高校野球選手権も、ベスト4が出揃い、いよいよ今日20日の準決勝、22日の決勝を残すのみとなった。今秋のドラフト候補たちも大会を盛り上げた。故・野村克也氏の“右腕”としてコーチとして活躍、阪神でスカウト、ヤクルトでは編成の責任者としてドラフトの指揮も執った松井優典氏に夏の甲子園で光った“本物”のドラフト候補を10人ピックアップしてもらった。
高松商・浅野と近江・山田は1位候補としての評価が急上昇
ネット裏のスカウトの姿が消えつつある。これもクライマックスを迎える夏の甲子園の風物詩のひとつ。ベスト4にドラフト候補が残ってはいるが、各球団の夏の高校生の最終チェックは終了した。 今大会をプロスカウトの目線で見れば、高松商の浅野翔吾(170㎝/86㎏※以下単位省略)と“二刀流”近江の山田陽翔(175/78)の“BIG2“の大会だったのか。 松井氏は、「全体的に見て今大会は不作。特にショートを中心とした内野手に目立った選手がおらず、左投手にも上位候補は見当たらなかった。今秋のドラフトの目玉として、高松商の浅野と近江の山田の2人が評価を上げた大会だったのでは。ただ可能性を感じる面白い選手はいた。誰をピックアップするかはスカウトの腕の見せ所となると思う」と統括した。 準々決勝では、その“BIG2“の対決があった。 大会3本塁打を加え、通算本塁打数を67としただけでなく、打率7割、5四死球、2盗塁までマークした浅野については、こう評価した。 「よく高校通算本塁打何十本という記録が取り沙汰されるが、スカウトが重要視するのは、どんな投手からどんなボールをどんな状況で打ったのかという点。その意味で浅野の真の実力を計る絶好の機会だったわけだが、浅野はバックスクリーンへの本塁打を含む3安打、満塁覚悟の申告敬遠という伝説まで作った。パワー、対応力、勝負強さ、足、肩とすべてが一級品であることを証明した。ストレートでも変化球でもすべてのボールにタイミングが合って“間”を作ってスイングできるのが彼の特長。だから広角に打て選球眼の良さにもつながる。大会打率7割も納得。右の外野の長距離砲は、どの球団も欲しいので商品価値は高い。プロでは中距離ヒッターの部類に入るのかもしれないが、身長170センチの体格のハンデは足と肩でカバーできるし間違いなく1位で消えるだろう」 準決勝までの4試合にすべて先発し2回戦の鶴岡東戦では完投勝利、おまけに3回戦の海星戦では勝負を決める満塁本塁打を放った山田への評価も高い。 「甲子園に来るたびに大きく成長した。140キロ後半を出せるストレートの球威と角度に加え、スライダー、ツーシームの精度も高くリリースも安定している。何しろ状況によってギアチェンジできる部分が素晴らしい。ゴロや三振を狙って取れる。野球を知っているのだろう。多くの球団の評価は投手だろうがスイング力もあるので二刀流としての可能性も捨て難い。リーダーシップや責任感の強いこういう選手には、プロで将来チームの主力になれる可能性がある」