なぜ絶対王者の大阪桐蔭は準々決勝で下関国際に敗れたのか…奇策が裏目に出ての三重殺と「常勝軍団ゆえの死角」
全国高校野球選手権大会の準々決勝4試合が18日、甲子園球場で行われ、3度目の春夏連覇を目指していた大阪桐蔭(大阪)が下関国際(山口)に9回に逆転を許して4―5でまさかの敗退を喫した。2点を先制して、同点に追いつかれた5回途中からは、プロ注目の2年生左腕の前田悠伍を投入したが、7回にはバント失敗からトリプルプレーを食らうなど流れをつかめず9回に逆転を許した。プロ予備軍とまで呼ばれる圧倒的な戦力を誇り連覇確実と言われた絶対王者は、なぜ敗れたのか。
ボール球を振り続けた打線の狂い
これが絶対王者と言われた大阪桐蔭の姿だろうか。 土壇場の9回に逆転2点タイムリーを浴び、この試合初めてリードを許し4-5で迎えた最後の攻撃。追いつめられた大阪桐蔭ナインには、余裕も、自信も、再逆転を奪う力もなかった。4番の丸山一喜(3年)からの好打順だったが、下関国際2番手の背番号「6」、仲井慎(3年)の最速147キロのストレートが立ちはだかった。レフトフライが続き、最後は田井志門(3年)がボール球のスライダ―に手を出して空振り三振に倒れた。大阪桐蔭らしからぬエンディングが、まさかの敗戦を象徴しているかのようだった。 昨秋の神宮大会、今春の選抜大会に続いての3冠を狙った夏だった。新チームになり、春季近畿大会で智弁和歌山戦に敗れた1敗しかしていない“負けを知らない”ナインは泣き崩れた。 全国に強力なスカウト網を張り、才能のある選手を鍛錬。不動の地位を築き上げてきた西谷浩一監督の視線もさまよっているように見えた。 「日本一というか、春夏連覇を言い続けてきましたが、達成できずに残念です。この代は非常に一生懸命で、お手本になるような学年。こういう選手と勝ちたかったし、勝ちに結びつけるのが監督の仕事だが、それができなかった。泣いている選手を見ると、こちらも悲しい」 序盤は王者らしい試合運びを見せた。背番号10の先発右腕、別所孝亮(3年)が3者凡退でスタートを切ると、その裏にプロ注目の捕手で3番の松尾汐恩(3年)、丸山の連続タイムリー二塁打で2点を先制。同点とされた5回には相手の落球で勝ち越した。追いつかれた6回二死一、三塁からは、2番・谷口勇人(3年)が、勝負強さを発揮しレフト前タイムリーで再びリードを奪った。 しかし、さらに二死満塁となったところで遊撃から救援マウンドに上がった仲井に流れを止められてしまう。一気に突き放したいところで丸山のバットが空を切る。高めの釣り球。見送ればボール球だった。ボールの見極めを徹底してきたはずの大阪桐蔭打線が狂い始めていた。 試合後に、この場面を「これ以上点をやったら逆転できないと思った」と振り返った仲井の球威と、縦の変化球の精度とキレが、そうさせたのだが、負けを知らないプレッシャーが、超高校級のスラッガー達を焦らせ、冷静さを失わせていた。