「敵将・阪急の上田監督の抗議のおがげで勝てた」ヤクルトで通算191勝・松岡弘氏が語る日本シリーズ激闘秘話 広岡監督との確執&40年後の感謝の言葉
王氏「速いボールを放れ」
全盛期のONと真っ向勝負を繰り広げた松岡氏。王氏には通算対戦打率3割2分2厘、18本塁打と打ち込まれている一方で、長嶋氏に対しては通算対戦打率2割7分8厘、6本塁打と比較的抑えている。 徳光: 王さんには打たれてるんですね。 松岡: だって、僕は王さんのときは間違いばっかりしてますもん。 あの一本足打法の足をどうしても克服できなかった。あの足に俺の速いボールが当たるんじゃないかと思って、インコースを投げられなかった。 徳光: オールスターのときとか、王さんとそういう話をしたことはあるんですか。 松岡: ありますよ。今でも王さんに言われたことを覚えてます。「速いボール放れや、俺、打てねえから」って言われた。「お前、カーブなんか放るから、真っすぐがよく見えるんだよ。真っすぐをどんどん放ってこられたら、そんな簡単に打てないよ」って。 徳光: 王さんに。 松岡: その言葉にだまされた(笑)。試合の後半に真っすぐを投げたらパッカン、パッカン打たれた。でもよく考えたら、だまされたんじゃなくて球が甘い。「インコースに真っすぐを投げられたら打てない」ってこと。 徳光: むしろ「一本足を狙え」って言ってるようなものですね。 松岡: 一本足の膝の前あたりに投げると、アウトコース寄りの真ん中になるんですよ。膝に向かって投げると、ど真ん中。足の付け根ぐらいに投げると、ちょうどいいインコースになる。そこへ投げる勇気がなかったんです。だから、王さんに対しては甘い。 徳光: 長嶋さんとはオールスターで話したことは。 松岡: 長嶋さんはないですね。ほんとにしゃべってくれないんですよ。 徳光: でも、僕らにはよく「松岡が一番速い」って言ってましたよ。 松岡: オールスターでベンチにいても、あの人は目がこちらに向く人じゃない。全部、お客さんのほう。そういう性格の人ですから、僕と話してくれる時間はないです。オールスターではうろちょろしてて目立つ人なんで(笑)。 徳光: ファンサービスでね。 松岡: ほんとによく動きますよ。投げたあと、どれだけ走っていきましたかね。サードゴロを捕ってパーッと投げたあと、タッタッタッタッと行って、ピッチャーマウンドをくるくる回って帰ってきてね(笑)。
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