西武の強さ秘密…森4打点&猛抗議とスパンジーあわやサイクルの裏に何があったのか?
西武が2日、メットライフドームで行われたオリックス戦で3本塁打を含む今季最多の15安打と打線が爆発し先制されたシーソーゲームを9-5で制した。ヒーローは決勝の2点タイムリーを放ち今季1号を含む3安打4打点をマークした森友哉(24)だったが、スパンジェンバーグ(29)も、あわやサイクルの大活躍。その新外国人は試合前に栗山巧(36)から日本野球で成功する方法についてレクチャーを受けていた。西武の強さの秘密を垣間見ることのできた激勝。1、2番と下位打線に復調気配が出てきて、3位につけている西武の首位獲り態勢が整ってきた。
森の猛抗議で判定覆す
森の声が無観客のメットライフドームに響く。 「ファウルだ。ファウル!」 宗の一打で1点差に詰め寄られ、なおも7回一死二、三塁から、平井が大城に投じた初球にスクイズを仕掛けられた。森は一塁線付近に転がったボールを素手で捕り、本塁へ突入してくる三塁走者の山足にボールの入っていないミットで“空タッチ“にいった。当然、球審は「セーフ」のジャッジ。一度は、同点とされたが、森は猛抗議した。 バントをした大城も「ファウル」と判断したのか、すぐに一塁へ走っていなかった。4人の審判団は、マウンドの後方で緊急協議。 責任審判の笠原塁審が場内アナウンスで「今、キャッチャーの前にバントが転がりましたが、球審の深谷は、捕手の死角に入ったため、一応“フェア“とジャッジしましたが、見づらかったため、4人で協議した結果、”ファウル”。ランナー二、三塁で再開します」と説明して判定を覆した。同点が一転、仕切り直しになったのである。 「それはダメだよ」 今度は、オリックスの西村監督が猛抗議。3分以上食い下がったが、結局、森の抗議が通った。
オリックスベンチは執拗だった。カウント2-1からの4球目に大城に再びスクイズのサインを送ったが、またファウル。それでも強烈な一塁ゴロで、山川が打球を前に落としている間に同点としたが、猛抗議をした森の胸中には、ふつふつと沸き立つものがあった。 「平井さんためにも…スパンジーが激走、源さんがつないでくれた。いろんな意味で、なんとか1点を絶対に取ろうと」 同点にされた平井は、併殺で終わっていたはずが中村のエラーに足を引っ張られる不運があった。それでも勝ち越しを許さなかった力投に森は、「勝利投手」権利で応えたいと考えていた。 その裏、一死からスパンジェンバーグ、源田の連打で一、三塁の絶好の勝ち越し機。森は左腕の山田が投じた高めのボール気味のスライダーをしっかりとためて逆方向へフルスイングした。低い弾道を描いた打球は決勝の2点タイムリーとなって左中間を抜けていった。 逆方向への強い打球は森の「調子のバロメーター」である。 森は3回にも高めのボール球を叩いてバックスクリーン右に3-3の同点とする今季1号。そして8回にもラッキーなタイムリー内野安打を放つなど、3安打4打点の大暴れだった。 「狙ったわけでないけど1本(本塁打)出てほっとした。とりあえず前に飛ばそうと。センターフライかなと思ったんですが、伸びてくれてよかった。理想の形で打てたのは、(逆方向の)2本目のヒット。あとの2つはたまたま。結果ヒットが3本出たので、本来の調子を取り戻すいい機会だったんじゃないかなと思います」 昨年の首位打者&MVPがやっと覚醒した。 そして森が、「サイクルヒットを狙えるのは凄い。あそこで四球を選べる選球眼。いろんな意味で凄いなと思いました」と絶賛したのが、あわやサイクルヒットに迫ったスパンジェンバーグである。 3回にバックスクリーン左へ今季2号ソロ。5回には先頭打者として右中間に三塁打を放ち、源田の犠飛でホームを踏み、7回には、森の決勝タイムリーにつなぐライト前ヒット。サイクルヒットまで、あと二塁打だけだったが、8回には、2人が出塁しなければ、もう打席が回ってこなかった。だが、二死から木村、金子の“打率1割台コンビ“が、連打で追加点を刻み、スパンジェンバーグに夢のチャンスをつないだ。 その大事な打席で新外国人は、無理に記録を狙うのではなく四球を選んだ。森が絶賛するのは、その選球眼と自己犠牲の精神である。 「ツーベースが出れば、サイクルヒットということはわかっていたが、特に意識はしていなかった。甘い球が来たら打とうと思っていたが、最後の打席は、なかなかいい球が来なくて結果的にフォアボールだった」 実は、そう振り返ったスパンジェンバーグのあわやサイクルの裏には、ある秘密があった。