ザックジャパンがW杯で残した課題と収穫
後半から登場した10番、J・ロドリゲスも、局面で必ずと言っていいほど“違い”を生み出し、エースの仕事を全うした。それは、FK以外でシュートを放てず、クロスからアシストしたものの、バイタルエリアで危険な存在にはなれなかった本田圭佑とは対照的だった。 象徴的だったのは、82分のシーンだ。ピッチ中央で本田がボールを奪われると、一気に前線へと繋がれ、J・ロドリゲスのスルーパスからマルティネスに決定的な3点目を奪われてしまう。身体を投げ出してシュートブロックに行った内田篤人と吉田麻也は、しばらく寝転がったまま、起き上がれなかった。 今大会の本田は、1ゴール1アシストをマークし、日本の全得点に絡んだが、本調子からは程遠い出来だった。かつてのように、ゴール前で力強くボールをキープし、DFを跳ね飛ばすようにしてボールを運んでいく頼もしい姿は最後まで見られなかった。それが噂されているように病気のせいなのか、今冬に移籍したミランで出場機会に恵まれなかった影響なのかは定かでないが、日本の攻撃に迫力やスピードが生まれなかったのと本田の不調は、決して無関係ではないだろう。 本田だけではない。もう一方のエース、香川真司もまた、マンチェスター・Uで不遇をかこった影響なのか、満足のいくパフォーマンスを見せられなかった。少し前まで不動のボランチコンビだったはずの長谷部も手術した右ひざの状態が芳しくなく、事前のテストマッチを回避し、なんとか本番に間に合わせた状態で、遠藤も2、3年前と比べてパフォーマンスの低下は否めなかった。 チーム発足時から主軸であり続けた4人がベストの状態でW杯を迎えられなかったのは、ザッケローニ監督にとって大誤算だったに違いない。だが一方で、この4年間、メンバーをほぼ固定してチーム作りを進めてきた弊害が、ここに来て噴出したとも言える。たしかにアジアカップ、W杯3次予選、W杯最終予選という流れの中で、世代交代も推し進めるのは難しいかもしれないが、それにチャレンジしなければ、この先も、肝心の本番でチームの輝きが既に失われているという過ちを繰り返すことになる。 ■長谷部「事前のキャンプでは万全だった」 選手のコンディションはどうだったろう。コートジボワール戦の後半に足が止まったのは、本当に相手にボールを回されて体力を消耗しただけだったのか。このコロンビア戦でも長友佑都がカウンターの際に前線まで走れなかったり、途中で腰に手を当てたりと、本来のスプリントを出せなかったように見えた。 「事前キャンプのおかげでコンディションは万全だった」と長谷部は強調したが、高温多湿のレシフェ(初戦)、ナタル(2戦目)とも、猛暑のクイアバ(3戦目)とも異なり、極めて涼しく、距離も遠いサンパウロ郊外のイトゥがベースキャンプの地として相応しかったのか、検証する必要がある。