永遠の命は可能か?サイボーグ化、人のからだの交換部品を作り出す技術進展
修理技術から交換技術へ
これに対し、最近は、人工の生体代替材料の開発が盛んだ。さらに画期的なのは、ティシューエンジニアリングやバイオテクノロジーの進歩だ。 ティシューエンジニアリングによって、人のからだの交換部品が作れるようになってきた。また、バイオテクノロジーの進歩によって、自分の内臓や組織を培養できるようになり始めている。これはすごい変革だ。人のからだの治療が、部品の修理から、部品の交換という全く新しいやり方に変わりつつあるのだ。 CCDカメラを大脳皮質の視覚野につないで、目の代替をさせよう、というような研究が始まっている。かなり情報量の小さい画像ではあるけれども、目の見えない人に、明るい・暗いといったパターン画像を見せることに成功している。また、筋肉に筋電計をつないで、手足にはめた電動義手や電動義足を動かせるようにしよう、という研究も始まっている。こちらもまだかなりラフな動きしかできないけれど、手足の動かない人や失われた人が、自分の力で食べ物を口に運んだり、歩行をしたり、できるようになり始めている。 このように、これまで修理技術の進歩によって伸びてきた人の寿命は、これから、交換という革新技術によって、画期的に伸びる。人のサイボーグ化といってもいい。これは楽観的な予想ではない。パラダイムシフトの必然だ。 バイオテクノロジーの発展に大きな役割を果たすもう一つの科学技術は、コンピュータ技術だ。 インテルの設立者が1965年に見つけたムーアの法則という経験則によれば、半導体技術(正確には、ICチップ上に集積されたトランジスタや抵抗などの素子数)は、1.5年で2倍になる。ざっと10年で百倍、30年で百万倍、50年でなんと百億倍だ。この果実は、これまでは工業製品の高度化やオフィス・工場の合理化として結実してきた。今後は、この技術が、遺伝子の解析や脳神経回路の解析にも大きく生かされるだろう。 遺伝子の解析は、ティシューエンジニアリングやバイオテクノロジーの発展につながる。つまり、どうすれば個別の内臓や組織を培養できるかが解析され実践されるだろう。もちろん、病理の原因や対処法の解析も進む。つまり、遺伝子解析技術は、からだの交換技術の進展に大きく貢献することになる。