牧野任祐「今日は負け。格之進のレースだった」終盤優勝を争ったチームメイトに敬意【スーパーフォーミュラ第5戦決勝会見】
8月25日、栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎで2024全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦もてぎの決勝レースが行われ、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が今季2勝目を飾った。レース後、牧野と2位の山下健太(KONDO RACING)、3位となった野尻智紀(TEAM MUGEN)、さらに優勝チームより村岡潔総監督が会見に出席し第5戦もてぎを振り返っている。 ■村岡潔(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 優勝チーム監督 「勝って嬉しいのは決まっているのですが、やはり人間は欲深いからこそ次も勝とうと思うもので、できればワン・ツーは獲りたかったと思います。でも、やっぱりそこで勝ち残った方は立派なドライバーとは思いますし、負けた方と言うか今回の太田くんは次のためにこれを活かせるようにするしかないですよね。勝負の世界ですから」 「彼は『2位よりも』ということを考えたのだろうし、そういう結果だと思います。だから、今後いろいろなことを経験していくなかでチャンピオンを獲るにはどういう判断が必要かとか、このレースを勝つためにはどうするか、ということはお互いに充分分かっていてもあの戦いをした結果ですから、これもうチームとか誰かがコントロールできるものではないですし、その結果あれだけお客さんに楽しんでもらったということで、それ以上の収穫はなにもないですから、監督冥利に尽きるというところです」 ――ラスト10周の心境は? 「できれば、このままうまくいけばいいなという気持ちがありました。10周を切って(トップを走る太田格之進と2番手の牧野任祐のギャップが)5秒を切ったところですぐに無線で指示を出しまして、それは放送もされていましたよね? 『クリーンファイトで』ということを両方のドライバーに言っておこうと」 「事前にも今シーズンはドライバーふたりに『チャンピオンを獲りにいこう』と言っていて、今後必ずそうしたシーンがあるから、その時はクリーンファイトで任せると伝えていました」 「ただ、チームとして、ホンダとして、NTTドコモとしてはワン・ツーというのはどうしても欲しい。3-4位か5-6位かは分からないですが、そういうものは必ず欲しいから持って帰ってきてくださいという話の下で戦った結果です。どっちも悪いわけではないし、(太田は)トラブルでリタイアですからね。接触とかクラッシュ、コースアウトではないので、次に向けてチームのほうがきちっとクルマを作ってドライバーを送り出すことのほうが大事かなと思います」 ■牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 決勝1位 「トークショーやインタビューでも言ったのですが、今日は負けたなと思っています。(太田)格之進のレースだったと思いますね。残り3周のところで仕掛けて90度コーナーまで並走して行ったのですが、そこで決めきれなかったので。OTS(オーバーテイクシステム)もほぼ使い切って残り6秒くらいしかなかったですし、勝負には負けたかなと思っています」 「(オートポリスでの)1勝目と2勝目の差じゃないですけど、心境的には違うのですがこれを経てまた次の富士に向けてしっかり頑張っていきたいと思います」 ――ピットタイミングなど戦略の部分は? 「(チームメイトが入るタイミングを)早く決めて欲しいと思っていて、それ次第で自分は入る・入らない、両方の選択肢がありましたので。ただ、ポジションは僕のほうが後ろだったので優先権は6号車にあったと思います」 「それ次第で自分の戦略が変わってくる。6号車がミニマムで入れば僕は引っ張るしかないし、それに対してヤマケン(山下健太)が反応してくれたらいいなと思っていたのですけど、結局ヤマケンも引っ張る選択をとって、という展開でしたね」 ――終盤の展開はイメージどおり? 「山下選手に対して絶対にアンダーカットをしないといけないと思っていて、それは事前に(チームに)言っていました。引っ張り方向のレースだと残り10周とか11周くらいまでピットに入らないのが普通だと思うのですけど、残り15周というタイミングとしてはちょっと早いタイミングで入りました。その分、残りの周回数が厳しくなるかもと思っていたのですが、まずは山下選手の前に出るというのがひとつの目標だったので、そういう意味では戦略的にはやれることはやったと思っています」 「本当にワン・ツーが目の前にあったと思いますし、僕としては今回は2位だった思っていて、正直いまも『負けた』という感情のほうが強いです。ただ、チームとして総合的に見てもかなりレベルアップできたと思いますし、チームランキングの部分では2台でポイントを獲れなかったのは痛いですが、残り2大会4レースは僕たちが主導権を握れるんじゃないかな、という手応えがあったので次戦以降もしっかり、ふたりとチームで頑張っていきたいと思います」 ■山下健太(KONDO RACING) 決勝2位 「(牧野)任祐と(太田)格之進に完敗かな、というレースでした。決勝のペースがあまりよくないことは今までのレースからも分かっていましたし、今日の練習(FP2)の感じからも『速くはないだろうな』というのは感じ取れたので、厳しいレースなることは予想していました」 「太田選手はミニマム(10周)付近の速さが自分よりもあって、(アンダーカットに動いた太田に対して)カバーしに行くかどうかが今日のポイントだったと思います」 「自分的にはカバーしに行ったほうがいいのではないかと思ったのですが、エンジニアとチームと相談した結果、(ピットインを)引っ張ることになりました。後ろから牧野選手が来ていましたが、だんだん追いつかれながらもできるだけペースを落とさないように走っていたつもりです。けれど、やっぱり基本的にペースは足りていなくて……。牧野選手がピットが入った直後、カバーに入ったのですけど自分(のタイヤが)ズルズルすぎてアンダーカットされてしまいました」 「終盤、結果的にミニマム組(のタイヤ)がズルズルになったので、太田選手をカバーして11周目に入らなくてよかったと今では思っているのですが、そもそもレースペースが足りなかったので、『勝つにはまだ全然足りない』というのが今日のレースの印象でした」 ――序盤は1秒ほどリードしていた 「最初の10周くらいはペース差があっても『間違いなく抜かれないだろう』という自信があり、後ろから追いつかれながらもタイヤのことを考え、滑りださないように走っていたつもりです」 「ただ、どうしても(ペース的に)苦しかったので『ああ、今日も厳しいな』というのは5、6周目には分かっていて……やっぱり厳しいレースだったなという感じです」 ■野尻智紀(TEAM MUGEN) 決勝3位 「今大会もダメージリミテーションというか、そういうレースをせざるを得なかったというところが、まず今の自分たちの立ち位置を示しているなと思っています」 「ランキングトップはなんとか維持できたものの、最近は牧野選手のほうが高いパフォーマンスのレースが多いなとチームともども思っていますし、なにかしら自分たちの武器を、次の富士に向けてかたちにしていかないと、タイトルをどうこう言う立場に居ないのではないかという危機感はあります」 「今週は走り始めから非常に調子がよくなかったなかでもこういったポジションで、自分たちの中ではこれ以上ない週末を終えられたかなという実感はあるのですが、しっかりポイントも獲れたというのは他の選手に対してのプレッシャーになるかと思います」 「ただ、やっぱり自分たちの武器が最後の最後に効いてくると思うので、そこをしっかりと自分たちでよく分析をして、自分たちの強さや武器というのを次までに用意したいと思います」 ――牧野任祐が5ポイント差のランキング2位に上がってきた 「正直に言ってもう主導権は握られているくらいな感じで、彼にだいぶ追い詰められているというか、そういったマインドではあります」 [オートスポーツweb 2024年08月25日]