“運転する楽しさ”で人気、歩道を走れるスクーター「WHILL Model S」の魅力とは?【次世代モビリティ最前線! Vol.1】
かつてない速度で移動・交通に対する価値観が変動しているこの時代、人それぞれが求めるモビリティの在り方も転換期を迎えている。そこで、自動車ライター大音 安弘が、今みんなが気になる次世代モビリティの開発背景やモビリティの魅力に迫る。第1回目は、WHILL社の近距離モビリティ「Model S」を紹介する。 【写真】Model Sの詳細写真はこちら!
WHILLと3種のパーソナルモビリティ
新たな近距離移動手段として注目を集めるパーソナルモビリティだが、全ての製品が万人向けというわけではなく、身障者や高齢者には向かない製品もあるのが現実だ。その中で、全ての交通弱者をカバーし、生活を豊かにできる近距離モビリティと、そのプラットフォーム作りに取り組んでいるのが、「WHILL(ウィル)」だ。同社は、「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに掲げ、個人向け製品として、3つの近距離モビリティを展開している。 製品は大きく二つに分けられる。そのひとつが、幅広いニーズに応える「Model C2」と「Model F」の椅子タイプの近距離モビリティだ。大きな特徴は、建物内にも対応できる小回り性や機動性の良さ、そしてジョイスティックコントローラーによる直感的な操作性などが挙げられる。そして、もうひとつが2022年9月に投入したエントリーモデルで今回の主役となる「Model S」だ。
「Model S」はどうして誕生した?
「Model S」は、4輪カートタイプの電動車で、免許返納後などの移動手段とされる電動アシスト自転車やシニアカーでは満たせなかったニーズを反映させている。最高速度が時速6kmなため、免許が不要で歩道を走ることも可能なのは、他の製品と共通だが、全く異なるデザインと構造を持ち、操作もハンドルとレバーで行う。そして、最大の違いは、椅子タイプの2機種が屋内外の使用を想定しているのに対して、屋外のみとすることだ。 その開発の狙いについて、開発者の一人であるプロダクト・サービス企画室の赤間 礼さんは、「先行する椅子タイプのモビリティは、幅広いニーズをカバーできるように配慮し、開発しました。しかし、多様性と機能性の高さを重視した椅子タイプでは、より歩行に困難を抱える人向けというイメージから、これまでクルマに乗ってきた方がいきなり片手操作のモビリティを選ぶのは抵抗があるという声をいただきました。そこから、違和感なく使える新たなモビリティの構想が持ち上がりました」と話す。 WHILLはそこから、シニアカー同様の電動4輪カートタイプの構造を採用した。大きく構造変更をした理由のひとつが、ハンドルを備えたモビリティ化の必要性だ。意外なことにユーザーからは、操縦性に優れるジョイスティックが苦手との声があったそうだ。そこで操作や表示など機能面では、アナログ的な要素を重視し、多くの人が慣れ親しんでいるクルマに近いものや、クルマのような乗降性の実現を目指したという。 そして高齢者を含め、健脚の方にも受け入れられるよう、シンプルかつスタイリッシュなデザインにも拘った。このため、操作系の表示も、敢えてクルマ同様の英字表記としている。もちろん、手軽さだけでなく、買い物等の手荷物を収納できるカゴなどの機能性や、乗員に運転を楽しんで貰うべく、操作フィールや乗り心地も徹底したチューニングを施しているという。