「バンクシーはここにいた」──ロンドン動物園がゴリラの作品を撤去、レプリカに置換
ロンドンの街の9カ所に描かれたバンクシーの動物シリーズのいくつかは発表からまもなく、盗難や落書きから守るため作品が描かれた建物の関係者が保護や撤去をしたり、あるいは盗まれたりした。 ロンドン北東部にあるベニア板の看板に描かれた6作目「伸びをするネコ」は、泥棒が看板ごと破壊するのを防ぐため、業者によって撤去された。また、衛星放送のアンテナに描かれた4作目の「遠吠えをするオオカミ」は、白昼堂々、フードをかぶった3人組に盗まれ、実際の車に足をかけるように描かれていた8作目のサイは、車が撤去されたためその文脈が失われた。 そして8月19日、ロンドン動物園はシリーズ最終作として発表された「動物を逃すゴリラ」を、同園の約200年の歴史における「重要な瞬間」を「適切に保存」するため、作品が描かれたシャッターごと撤去した。と同時に、新たにゴリラのレプリカが描かれたシャッターを取り付け、その隣に「Banksy woz ere」(woz ereはイギリスのスラングで「ここにいた」の意味)と書かれた看板を設置した。同園はシャッターを撤去する前、ソーシャルメディア上で「夏の繁忙期にエントランスをきちんと機能させるため、16日をもって作品公開を終了する予定」であるとアナウンスしていた。 ロンドン動物園のCEOであるキャサリン・イングランドは撤去に際し、「私たちは、動物が人々にインスピレーションを与え、人を惹きつける力があることを知っています。動物園に描かれたバンクシーの作品がすでに多くの人々に喜びをもたらしていることに感激していますが、何より、野生動物にスポットライトを当ててくれたバンクシーに心から感謝しています」とコメントしている。一方、ゴリラの作品の今後についてはまだ決まっていないようで、同園はX(旧ツイッター)に、「このゴリラをどうするかはまだ検討中です」と投稿している。 またバンクシーは先週コメントを発表し、動物シリーズが「人々に思いがけない楽しみのひとときをもたらし、皆を元気づけることを祈ると同時に、破壊や否定的な行為ではなく創造的な遊びを通じて人間の能力を示したい」と述べている。
ARTnews JAPAN