「4浪建築学科合格」でも、彼が語る“努力の虚しさ”。学校でのいじめや親との関係に悩んだ日々。
「浪人を経て、『努力はもういいや』と思うようになりました。努力や根性でなんでも乗り越えるのは限界があります。自分は、過去にバカにされたことに対して、成績を伸ばすことで見返そうと思っていました。でも、成績が悪かろうが、良かろうが、等しく人間なのです。成績が悪いからといって、人格を否定される筋合いはないのだと思います。 当時の自分を振り返ってみると、馬鹿にされたのであれば、馬鹿にされたことそれ自体に、尊厳を潰されたのであれば、尊厳を潰されたことそれ自体に対して粛々と対処することができていればよかったなと思います。いまは他人を見返すことは考えません。嘲笑いなどの行為はハラスメントとして対処しています」
大学に入ってからの安藤さんは、建築学科で勉強をする中で、建築士の仕事に触れて職業に対する解像度が上がり、心から建築士の仕事に就きたいと思えるようになったそうです。 大学に通う傍ら、複数の学校にそれぞれ2年ずつ通い十数個(ボイラー技士・電気工事士・消防設備士など)の資格を取得しました。その後、新卒で街のリフォーム会社に就き、現場監督の仕事を2年続けます。 それから別会社で施工管理技士を取得し、7年間の勤務を経て、ついに建築士の仕事に就きました。
■受験勉強で気力の使い方を学んだ 「私は努力が嫌いです。ですが、最低限の『ごり押し』は必要なので、気力の使い方を見極めるようになりました。受験勉強で気力の使い方の初歩を学べたのはよかったと思います。現在は無理をせずに、仕事、資格取得、趣味などを並行しています。それを形作ってくれたのは受験勉強だったなと思えます」 苦労のすえ、現在は週休2日のホワイト企業で勤務することができていると語る安藤さん。 失敗を重ね、反省することはあっても、後悔はしていない彼の逞しさはまさに、苛烈な浪人の日々が作り上げたものなのではないかと思いました。
安藤さんの浪人生活の教訓:努力を最小限にし、使えるものをすべて使った上で、 可能な限り楽をして目的を果たすことが大事
濱井 正吾 :教育系ライター