「4浪建築学科合格」でも、彼が語る“努力の虚しさ”。学校でのいじめや親との関係に悩んだ日々。
「大きな作物を育てるために苗を引き抜くことを『間引く』といいますが、私はよく親に『出来が悪かったら間引く』と言われていました。だから、弟や妹の進学にもお金がかかるし、家にとって損だと思う人間なら切り捨ててほしいという内容を伝えたんです。 でも、それを伝えたら『普通の人が卒業したとき、お前は無職か浪人なんだからな。(不憫だから)今回だけは予備校代を出してやる』と言われて、初めて予備校に通うようになりました」
■4浪目で初めて予備校に通う 4浪目にして初めて予備校に通うようになった安藤さんは、今までの自分のやり方の失敗に気づくことになります。 「やり方が悪かったのです。親は受験戦争を勝ち上がってきたタイプなのですが、その勉強法は丸暗記でした。当時はそれで大学に合格できたのですが、自分たちの世代は覚えたところで、覚えていることが試験でそのまま聞かれるわけではないので、丸暗記だけでは通用しません。 高校のときは知らず知らずのうちに授業で復習をしていたから、成績が保てていたのかなと思いました。あとはやはり、長時間勉強というのは物理的に無理がありました。机の前にいるけど、気がつけば深夜ラジオに集中していたというように、勉強らしい勉強は集中してできていなかったのだと思います」
父親の時代のように、ひたすら『四当五落』(※4時間睡眠で受験勉強する者は合格し、5時間睡眠すると落第する)という言葉を信じて、睡眠時間を削って1日15時間前後の勉強に励んだことも、失敗だったと振り返ります。 予備校生活で周囲に友達もでき、1人で抱え込まずに済むようになったこともあって、勉強時間は10時間くらいに下がったものの、健康的な生活習慣と授業を受けて復習するという適切な勉強習慣を続けた彼は、偏差値を現役のときの45に戻すことに成功しました。
「この年の受験では、もう医大は無理だから建築のほうに行けと親から言われていました。そのため、建築を学べる大学を志望して受験しました」 ダメだったら専門学校に進むことを決めていた安藤さんは、東洋大学・日本大学・芝浦工業大学・工学院大学・東海大学を受験します。第1志望には届かなかったものの、この中のある大学の建築学科に合格し、受験生活を終えました。 ■努力は正しくしなければ意味がない 無事に合格し、「助かったと思った」と語る安藤さん。受験生活を頑張れた理由を尋ねると、「人生が終わると思っていたから」、自身が浪人を重ねた理由についての分析を聞くと、「努力の方向性を間違ったから」と答えてくれました。