トヨタ2029 電動化を最適化する 寺師副社長インタビュー(2)
“全部をFCVとかEVとかではなく、それぞれのエネルギーの事情に一番適したものを使っていただくのがいい”
池田:それとたぶん考えなきゃいけないのは、世界の各地でインフラの状況ってすごく違うじゃないですか。例えば今トヨタは、ロサンゼルス港で巨大なトラックの実証実験をやっていますよね? EVでやってみたけど稼働率が低すぎてどうにもならないから、FCVでつくってくれと言われて。あれなんかは、水素が常時用意できる場所があるからできるわけじゃないですか。あそこではあれがたぶん今ベストなわけですが、どこでもできるかと言えばそうじゃない。一方で、探せば似た条件の場所もある。日本なんかでも、もし工業地帯とかであれば、寺師さんご存じのとおり副生水素、いろんな工業製品をつくる過程で自然にできてしまう水素があって、その副生水素を使えば水素をわざわざつくらなくても余ったもので走れてしまう。 寺師:僕たちは別に全部をFCVにしようとか全部をEVにしようとかそういうことを考えているわけではなく、それぞれのエネルギーの事情によって一番適したものを使っていただくのがいいんではないかって思うんですね。 池田:各地各地の事情によって。 寺師:おっしゃるとおり、コンビナートなど、いろんな工業地帯のところで水素ができますと。じゃあそれを使ってこの町は水素のインフラできませんかとか、例えばノルウェーのように水力発電がものすごく盛んで、もうそこでたくさんつくれる電気があるのでまずそれでEVやりませんかと。余ったものは水素にして貯めて、じゃあFCVもっていう、それぞれの地域だとか特徴によってエネルギーの活用法が変わるんだろうなって思うんですよね。 池田:そうすると、要するに何か一色になるという考え方ではなくて、エリアごとに最適なパワートレインがあるということですね。 寺師:たぶん僕は、地域地域によって電気が安くつくれるところとか水素がたくさんできるところ、どちらもないので別のやり方を考えましょうってところ、それぞれの地域事情が混ざり合いながら、最終的に2050年ぐらいまでにトータルで現実的な答えができるだろうっていう。 池田:時間軸でインフラが整理されていって、違う状況に移り変わっていくところも当然起こりうるわけですよね。 寺師:当然、そういうことです。