アサド政権崩壊後の復興には「日本の技術支援も必要」シリア新政権の“キーマン”バハラ議長「銃による支配を終え、民主主義のルールに基づく未来へ」
全ての武装勢力を解散し、シリア正規軍に集約できるか
首都ダマスカスに侵攻し、アサド政権を崩壊させた「シリア解放機構(HTS)」のアハマド・シャラア(通称ジャウラニ)指導者が12月24日、その他の武装勢力の指導者らと各勢力を解散し、シリア暫定政府の国防省のもとに統合することで合意したとシリア国営通信が報じた。 シャラア指導者は、シリアの再建には国内外のシリア人全員の努力が必要であり、団結して取り組む必要があると強調。そのうえで国家以外の武装は認められないとして、全ての武装勢力の戦闘員はシリア国防省に加わり、部隊はシリア正規軍に集約するとした。 また、2025年3月1日まで統治を担うシリア暫定政府を樹立し、北西部の支配地域を率いてきたムハンマド・バシル氏を首相に任命。バシル氏は12月10日、アサド政権の閣僚も交えて閣議を開き、政権委譲の手続きを決定した。 いまのところ平和的に政権委譲が進んでいるが、これは反政府勢力「シリア解放機構」が主導している点が大きく、そのほかの武装勢力の思惑が入っていないため混乱がないとみられる。 しかし、12月24日に合意した武装解除にはシリア北東部を実効支配するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)が加わっていないとみられ、今も衝突が続いている。2025年3月には様々な組織を取り込んだ政権の樹立を目指しているが、シリアには様々な宗教、宗派があることから、「全ての武装勢力の解散」「非宗教の政策」などで一致できるかは見通せていないほか、SDFと暫定政府との衝突が拡大すれば、これまでよりさらに不安定な状況に陥る可能性もある。国際社会は、包括的で透明性のある政権が誕生できるのか注目している。
初めて祖国の地を踏む子供も…トルコから多くのシリア難民が帰還
トルコにはアサド政権の独裁から逃れようと300万人超のシリア難民がいる。政権が崩壊すると、トルコとシリアの国境では多くの難民がシリアに帰還するために列をなしていた。 国境には午前8時から人が集まり始め、午前10時には行列が連日できている。 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、2025年1~6月の間に最大100万人のシリア難民が帰国する可能性があるとの見通しを明らかにしている。取材した日も多くの人が集まっていたが、トルコ政府が国境の通過を円滑にできるよう人員を増やすなどの対応をしていたため、混乱はみられなかった。 トルコから帰国するシリア難民は、「アサドはいなくなり、もう戦争はないから、故郷に帰れる。私たちがシリアを再建する」「シリアに秩序が生まれ良くなると思う。新しい生活を始めることができる」とシリアの未来への期待感を語っていた。 帰還する避難民の中には、避難先のトルコで生まれ、今回初めて祖国・シリアの地を踏む子供の姿もあった。「初めておばあちゃんに会いに行く。本当に嬉しくてわくわくする」とカメラに手を振ってくれた。
【関連記事】
- 「アサドは最も恐ろしい人道的犯罪をした」アサド政権崩壊のシリア“キーマン”単独インタビュー シリア国民連合ハディ・バハラ議長「復興には20年かかる」
- 「故郷に帰れます」トルコからシリア難民が続々帰国「私たちがシリアを再建します」…アサド政権崩壊で反体制派が暫定首相に
- 「ランドクルーザーだ!」“アサド氏のガレージ”にランボルギーニやフェラーリなどずらり…資金源は“違法薬物の密売”か シリア難民帰国も食糧不足が深刻化
- ロシア亡命のシリア・アサド前大統領が声明「個人的な利益のために地位を求めていない」内戦下での優雅な暮らし批判に弁明
- “軍事拠点からの撤退”の動きも…シリア・アサド政権崩壊で“後ろ盾”ロシアへの軍事的影響【日曜安全保障】