「お姉ちゃんのために、あなたを産んだ」…障害のある50歳長女に、4,000万円と不動産を準備した元公務員の両親。父亡き後、病で死にかける母へ震えながら放たれた「次女のひと言」【FPが解説】
きょうだい児が抱える悩み
「きょうだい児」とは、病気や障害のあるきょうだいがいる方々のことです。きょうだい児には、障害を持つ本人でもなく、また、その親でもないという立場だからこそ抱えている、さまざまな特有の悩みがあります。 なかでも、「親亡き後」の問題はきょうだい児にとっても切実です。ここでは、ひとつの家族の事例をみていきます。
姉の障害がわかるまで
高橋恵子さん(仮名/41歳)の姉の優子さん(仮名/50歳)は、軽度の知的障害があります。元公務員の父親(享年85歳)は5年前に亡くなっています。現在は、実家で母親(84歳・元公務員)と3人で暮らしています。 姉の優子さんは少し小さく生まれましたが、すくすくと成長していきました。母親は「ほかの子と比べると話す言葉が少ないかしら」と感じていたそうです。「おとなしい子なのね」そう思っていましたが、そのこと以外には、なんら気になることはありませんでした。 しかし、小学校に入学したころから、授業のスピードについていけないようで、学習に遅れがあることが指摘されました。担任の先生から、専門機関を受診するように勧められ、検査を受けて障害があると診断されたそうです。優子さんのことで両親ともに当初は大変なショックを受けました。しかし、優子さんの将来を前向きに考え、明るく暮らしていこうと決めました。 母の決断 母親は中学校の教員でした。母親は転職し、仕事をフルタイムからパート勤務に変更して、それからも優子さん中心の生活を続けました。その後、恵子さんが生まれます。母親は43歳になっており、高齢出産というリスクを伴っての決断でした。 姉の優子さんは、無事高校を卒業しました。恵子さんは当時まだ小学生。このころから恵子さんは、母親から「お姉ちゃんのことを助けてね」と繰り返し聞かされてきました。あるとき、母親が父親に「優子のために恵子を産んだ」と話しているのを耳にし、恵子さんはショックを受けたもののそういうものなのだ、と受け入れて生きてきました。もちろん、恵子さんも大人へと成長するまでの途中途中でさまざまな葛藤がありましたが。