世界に先駆けてIoT分野を開拓したコマツ、建設機械の在り方を変えた特許戦略「Komtrax」とは?
Komtraxとは何か、まずは簡単に説明しておきましょう。 これは、建設機械に取り付けられたセンサーで建設機械の稼働状況などをモニタリングするシステムです。いわゆる「IoT」と呼ばれるシステムになります。建設機械の「IoT」ですね。 実はコマツは、IoTという言葉ができる前からKomtraxを事業化していて、Komtraxは今やコマツの経営を支える屋台骨になっているんですよね。 IoTを世界に先駆けて発明し実践し結果を出しているわけですから、まさに「IoT」のパイオニアです。 そして現在、Komtraxを軸にした事業拡大は総仕上げの段階にあり、コマツは次の一手として「スマートコンストラクション」と呼ばれる取り組みを始めています。 Komtraxの特許戦略についての分析は、僕が知る限り他にありませんが、ここで紹介している内容は、すべて特許情報や公開情報から読み取れるものです※ 。特許情報からここまでわかるのか、という参考事例としてもご活用ください。 ■ 1997年にIoTシステムを発明したコマツ 経歴のところで紹介していますが、僕は2002年~2003年にかけて、風力発電関連の新規事業を担当するため、コマツに在籍しています。2001年に社長に就任した坂根さんが、就任後すぐにKomtraxを標準装備にしましたので、ちょうど、Komtraxが盛り上がり始めた時期ですね。 この時期にIoTシステムを標準装備する時点でかなり最先端を行っているのですが、コマツがIoTに関する最初の発明を特許出願したのは1997年なんです。僕が社会人になった年です(笑)。その時点でIoTシステムを発明した人がいたなんて、ほんとに驚きです。 建設機械の事業というのは、景気の影響を非常に強く受けます。僕がコマツに入社した2002年当時、日本はゼネコン不況に陥っている、などといわれていました。コマツとしては、前年の2001年に赤字を計上して、リストラもやっています。でも、実はそれ以降は赤字にはなっていないんですね※ 。リーマンショックのときも赤字にはなっていません。 ※執筆時点の2024年3月までの状況