インドの女性監督が目指した「川端康成の文学」 是枝裕和監督と対談
インドの問題、考え続ける
対談の後には、観客との質疑応答も。インド国内の反応を聞かれたカパーリヤー監督は、「公開は12月で、映画関係者に向けた試写会では好印象だったようです。社会派の作品が受け入れられないこともありますが、訴えかけることが大切だと思っています」と明かした。多数の言語が飛び交うことについては「インドでは20以上の公式言語が使われています。ムンバイでは互いの言葉を理解できない文化があるんです。作中ではヒンディー語を話せない人を登場させて、言葉の壁が心理的に分断されている感覚を描いています」と解説していた。 両監督に対して、「女性の描き方」を尋ねる質問もあった。配信ドラマ「舞妓さんちのまかないさん」などで女性を主人公にしてきた是枝監督は「男性の立場で女性を描くのは難しい。日本では伝統的に虐げられた存在として描かれてきたが、実際に取材したところ、芸妓(げいこ)さんも花街によって育ち方や考え方などが違う。一緒くたにして 『かわいそうな存在』として扱うのは違うと感じた」という。 「『男性が描く女性像』から離れられると思うこと自体が傲慢だと思う。今の時代に、男の自分が女性像をどう描けるのか、どんな作品でも考えていきたい。カパーリヤーさんの作品の女性たちは、宗教や地域の違いや、身分制度がある中で婚姻の難しさに直面します。日本でも同様の問題は見えにくいけれどあるので、そのテーマを表面化させることも重要だと感じています」 カパーリヤー監督は「インドでは多数の階層、グループが存在しています。ジェンダーもそのひとつ。女性の生き方や結婚を、社会がコントロールするという歴史や文化も実際にある。インドが抱える問題について、考え続けなければならないと思っています」。
サンドシアター代表 山田あゆみ