新幹線の自由席乗車率が繁忙期で200%に迫っても、経営効率が下がるナゾ
また、従来の繁忙期は7月下旬から8月いっぱい、閑散期は9月、11月の平日など、ざっくりとした期間で決まっていたが、最繁忙期の登場にあわせてメリハリのある設定に変更。 最繁忙期を年末年始やゴールデンウィーク、お盆のピークに集中的に設定するとともに、その前後に通常期、閑散期を設けるなど、ピークシフトを強く意識した設定となった。 通勤路線とラッシュの関係と同様に、新幹線も年末年始やゴールデンウィーク、お盆の三大繁忙期に臨時列車運行に備えた車両や設備を保有している。 それでもピークは指定席の予約が取れず、自由席乗車率が200%近くに達するが、車両増備、増発など供給量を増やしてもキリがなく、経営効率が下がるだけなので、価格差をつけて需要側を調整する必要がある。 ● 自由度が低い 鉄道の価格戦略 もうひとつ期待できる効果は「機会損失」の解消だ。ホテルの空き室や交通機関の空席は翌日に持ち越して販売できない。値下げすれば売り切ることができるかもしれないが、全体を値下げすれば減収になり、直前になって売れ残りを値下げすれば顧客の信頼を失う。
ダイナミックプライシングの代表格である航空業界は、曜日(月曜日から木曜日は安く、金曜日と土曜日が高い)、季節(年末年始やゴールデンウィーク、お盆は高い)、時間(午前中の便などは高く、早朝や深夜などは安い)で運賃が異なり、予約時期によって割引率も変わる。 ダイナミックプライシングは、価格を柔軟に変更可能でなければ成り立たない。1970年代以降のアメリカ航空業界で柔軟な価格戦略が流行した背景には運賃分野の規制緩和があり、日本で定着したのも2000年の運賃自由化以降のことだ。高速バスも近年の規制緩和で柔軟な運賃設定が可能になった。 一方、鉄道の価格戦略は自由度が低い。1997年以前の鉄道運賃はひとつひとつの区間ごとに金額が決められていたが、1997年の規制緩和で上限運賃の範囲内であれば事前の届出で運賃・料金の割引ができるようになった。 しかし、需要が大きい時期に、列車の運賃・料金を上げることはできないため、航空業界のような価格戦略は難しい。