もう一つの“小さな御柱祭” 長野各地で繰り広げられる「小宮祭」
白樺湖の御柱は、小宮祭で曳かれるものの中では大きい方で、大社の御柱の半分から3分の2程度。3本はこの日までに既に祠(ほこら)の周りに建てられており、水上曳行するのは最後の1本だ。力を合わせて湖を渡るために、子供からお年寄りまで150人ほどが集まっていた。大社の御柱祭は氏子のみが参加を許され、観光客は沿道や有料の観覧席などから見物するが、白樺湖の小宮祭は、法被代、保険代などを含む3500円の参加料を支払えば、誰でも綱を引くことができる。そうした観光客の中には、前々回から数えて12年ぶりに、大阪から参加したという男性もいた。
「木落し」は、男衆が御柱の上にまたがったまま急坂を滑り降りるという危険を伴うものだが、白樺湖の小宮祭の木落しは距離が短く、斜度もそれほど急ではない。とはいえ、子どもたちの「木遣り唄」に乗って威勢のよい掛け声と共に大勢の人たちが綱を引き、坂を滑り降りる様は、やはり勇壮だ。洗練された山車や神輿が登場する祭りと違い、原木を曳くという非常にプリミティブなこの祭りの風景は、縄文遺跡も多い八ヶ岳や諏訪湖を擁する雄大な自然によく溶け込んでいる。
最後の「建御柱」まで間近で見物
「御船渡し」あるいは「お池渡し」と呼ばれる水上曳行は、お宮がある島に向かって、湖面を300メートルほど船外機つきのボートで曳くというもの。木遣り隊とラッパ隊もイカダとボートで随行する。御柱には前後にV字状に突き出た「メドデコ」という飾り柱がついており、ここに子どもたちが乗って突き進む。白樺湖の水深は最大で8メートルほどに達するため、不慮の事故に備え、消防団員やカヌーのインストラクターも随行し、さらながら小さな護送船団のような様相となった。
目的地の「池ノ平神社」は、対岸に近い島にあり、御柱は水上に突き出た鳥居をくぐって上陸。「メドデコ」が突き出ているため、知恵と力を結集して隙間を縫うように鳥居の間を抜けていった。御柱は、いったん祠(ほこら)の前に安置され、「冠落とし」が行われた。御柱の頂点を3面(または4面)に削り落とし、鉛筆のような尖った形に整える儀式だ。これにより、御柱は正式に神としての威厳を整える。