もう一つの“小さな御柱祭” 長野各地で繰り広げられる「小宮祭」
移住民である筆者が住む茅野市の別荘地『白樺高原・緑の村』でも、9月11日に、10月に曳行する御柱の切り出しが行われた。朝9時に住民有志15人ほどがチェーンソーやナタを手に伐採場所に集合。切り倒すのは、敷地内の高さ20メートルほどの2本のカラマツの木だ。伐採に先立ち、根本にお神酒と塩をまき、柏手を打つ儀式を行った。
伐採作業そのものは林業で一般的に行われているやり方と違いはなく、倒す方向を決め、ワイヤーを張ってチェーンソーで根本に切り込みを入れる。この作業は危険を伴うため、本職の住民と管理事務所のスタッフが担当した。轟音と共に倒れた木は、その場で長さ約5メートルずつに分割。それぞれ皮むきをして、御柱の完成だ。8本の御柱をつくるのにかかった時間は3時間ほど。10月9日の小宮祭まで、管理事務所前に安置される。
避暑地としても知られる諏訪地方の八ヶ岳周辺には、蓼科高原などの別荘地が広がり、都会からの移住者が多い。自分を含め、そうした住民もやはり諏訪大社の氏子であり、大社の御柱祭に参加できるし、小宮祭も行っている。筆者は以前、別荘地内で祭りとは別に純粋な伐採作業を手伝ったこともあるが、基本的にやることは同じである。この地では、伐採や間伐は今も日常的に行われているし、「山」や「木」に特別な感謝の思いを寄せて暮らしているのは、別荘族も地元住民も変わらない。御柱祭とは、山間地に暮らす人々にとって、太古の昔から生活に密着した行事だということを実感している。
白樺湖に向かって「木落し」
我が別荘地から3キロほど国道を車山方面に上がっていくと、レジャースポットの白樺湖(標高1416メートル)がある。ここに浮かぶ島にも小さなお宮があり、同日、やはり小宮祭が開催された。地元での切り出しを終えたその足で湖畔に行くと、観光駐車場からボート乗り場に降りる30メートルほどの坂道の上に、「木落し」を待つ御柱が待機中だった。坂を下った御柱は、そのまま湖に引き落とされ、ボートで島のお宮まで水上を曳行される。白樺湖の小宮祭は、他では見られない“水上の御柱祭”なのだ。