2024年の景気を振り返り…歴史的猛暑、最も「マイナスの影響」を受けた業種は衣料品専門店【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】
約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。関係の深い「気象」と「景気」ですが、今回は「2024年の猛暑」が景気に与えた影響を振り返りましょう。
24年猛暑、最もマイナス影響を受けた業種は「衣料品専門店」
2024年は猛暑だった。福岡県太宰府市では、9月20日に62日目の猛暑日(=最高気温が35℃以上の日)を迎え、国内の最多記録を更新した。また、2024年における東京の真夏日(=気温30℃以上の日)は合計83日で、過去最高だった2023年の90日に続く第2位になった。2024年の月ごとの真夏日は、6月が7日分、7月が25日分、8月が最も多い29日分、9月が19日分、10月でも3日分あり、残暑が厳しかったことがわかる。 内閣府『景気ウォッチャー調査』で2024年7月~9月の現状判断DIを業種別に見ると、最も厳しい判断を下したのは衣料品専門店で、その回答結果は3ヵ月連続で「40割れ」となっていた(図表1)。
『景気ウォッチャー調査』とは?
2000年から始まった『景気ウォッチャー調査』は、調査時点が前月25日から月末で、結果発表が原則翌月の第6営業日という、速報性に優れた景気指標である。『景気ウォッチャー調査』の現状判断DIは「良くなっている」から「悪くなっている」までの5段階の回答を1~0まで0.25刻みで点数化し、回答数で加重平均するものだ。 『景気ウォッチャー調査』は、全国各地で景気に敏感な立場にある人々からの報告を、各地域のシンクタンクが処理するシステムになっている。調査対象の景気ウォッチャーは全部で2,050人である(当初は一部の地域だけで500人からスタートし、2001年8月から2050人体制となった)。現状と先行きの景況感やその理由などを答えてもらうことを通して、地域ごとの景気動向を的確かつ迅速に把握し、景気動向判断に資する調査である。 景気ウォッチャーを選ぶに当たって、業種と地域という2つの基準を設け、それぞれの内訳のウエイトを民間の実態に合わせて決め、全地域の合計が日本経済の縮図になるように設計された。 景気ウォッチャーの構成は、タクシー運転手、百貨店やコンビニ、家電量販店、スナック店長など、多くの消費者と接する「家計動向関連」が約7割を占める。約2割は受注の動きなどがわかる「企業動向関連」、残り1割はハローワークや学校の就職担当などの「雇用関連」である。それぞれの地域事情に詳しいシンクタンクが、「地域の景気動向をきちんと把握する能力と意欲があり、的確に説明できる人」を厳選している。 ポイントは、使命感を持つ方が景気ウォッチャーになっており、その回答率も9割程度と高いことだ。それゆえに『景気ウォッチャー調査』では、景気動向を的確に表す結果が得られている。