2024年の景気を振り返り…歴史的猛暑、最も「マイナスの影響」を受けた業種は衣料品専門店【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】
気温が落ち着き、11月下旬に「衣料品専門店」は持ち直しへ
『景気ウォッチャー調査』では、注目される事象のワードに関するコメントだけから算出した「コメント別DI」を簡単に作成し、その事象の影響を判断できる。このように、「捉えどころのない景気の実感」を数値として把握できる点も、本調査の特徴である。 「気温」関連現状判断DIを作成し、24年の夏から秋を振り返ったところ、7月は54.3と、景気判断の分岐点である「50」を上回っていた。エアコンなどの売上が堅調で、家電量販店などは景気が良い状況だった。 しかし、猛暑が厳しい8月の「気温」関連現状判断DIは48.3と、分岐点「50」を下回った。9月は48.1と低下し、10月になっても残暑が厳しかったため8ポイント悪化して40.1と、景況感の悪化要因になった。なお、この間も、2~3ヵ月先の「気温」関連先行き判断DIは分岐点の50を上回る状況が続いていた。景気ウォッチャーたちは、気温が落ち着けば景気に対するマイナスの影響がなくなると見ていたのである。この見立ては11月に実現した。 11月は、中旬以降の気温が低下したことで、秋冬衣料の活発化などが景況感の押し上げに働いたようだ。11月の「気温」関連現状判断DIは53.2と、10月(40.1)から13.1ポイントも大幅に改善し、判断の分岐点50を上回り、景況感の改善要因になった。 また、11月の「気温」関連先行き判断DIは53.3で、現状・先行きともに景気判断の分岐点50を上回った(図表2)。景気ウォッチャーの1人である南関東の衣料品専門店・統括は、「気温の低下、ブラックフライデーなどのセールにより、来客数が回復しており、売上を押し上げている。」という、「良くなっている」という判断のコメントをしている。 7月~9月の衣料品専門店の現状判断DI(原数値)は3ヵ月連続「40割れ」と、業種別では一番低い数値だった。しかし、気温の低下で秋冬物衣料が活発化した11月は50.4と、22年5月の50.9以来の「50超え」になった(図表3)。 宅森 昭吉 景気探検家・エコノミスト ESPフォーキャスト調査委員会 委員 ほか
宅森 昭吉