「この間、面白いことがあったんですよ」スター選手から“ドイツ6部アマチュアクラブの監督兼営業”にジョブチェンジした岡崎慎司(38)の変わったところ、変わらないところ
観客動員数は1試合平均82人から134人に増えた
岡崎が監督に就任した今季、バサラマインツの観客動員数は1試合平均82人から134人に増えた。明らかに“岡崎効果”だ。 「大都市のフランクフルトが近いので、そこに住んでいる日本人の方がたくさん来てくれるようになりました。我々の規模からすると、数十人の観客がコンスタントに増えるというのは簡単なことではないんです」(山下会長) 日本代表歴代3位の得点記録を持ち、マインツ05所属時代にはブンデスリーガで日本人最多となるシーズン15得点、さらに“ミラクルレスター”の一員としてプレミアリーグ優勝も果たした岡崎慎司が、今は100人前後のお客さんのためにアマチュアリーグで奮闘しているのだ。 「この間、面白いことがあったんですよ」そう言って岡崎は“営業エピソード”を話し出した。 ある時岡崎は、古巣マインツ05の試合を観戦していた。そこで隣の席に座ったドイツ人男性と雑談を交わすと、クラブの元スターに驚いた。そして話を聞くと、勤め先が日本企業ミスミの欧州拠点だという。 「やっぱり選手って名前が通っているんだなと思いました。僕のことを知っていて、ドイツにいるの? 最近は何してる? とかいろいろ聞かれて。バサラの話をしたら『じゃあミスミヨーロッパの社長とのミーティングをセットさせてよ』って。そんな風に色んなところで、出会いを探していますね」 この出会いがビジネスになるかは不明だが、バサラマインツの営業担当としてのリアリティが伝わってくる話だった。 一方で、悔しい思いをすることも多々あるという。 ドイツの冬の風物詩といえばクリスマスマーケットだが、バサラマインツも2025年からホームグラウンドになるヘヒツハイムエリアに出店し、岡崎も店頭に立った。ローカルコミュニティに溶け込むのが大きな目的だ。 しかしこのマーケットで、岡崎は考えさせられることがあったという。
バサラはクリスマスマーケットの商品として、メインスポンサーである「EA THAPPY」の力を借りて大福餅やどら焼きを販売した。EA THAPPYはドイツを拠点に1000店舗以上を展開する手作り寿司やアジアンフードのチェーン店で、ローカル系では珍しく日本人からの評判が高く、在住者にとって救いのような店だ。 「ちっちゃなエリアのクリスマスマーケットなのに日本人の方がたくさん来てくださって、それは本当に嬉しかったんです。でも他のドイツ人たちは(定番の)グリューワインとかフライドポテトの屋台を出していて『もしかしたらちょっと違ったのかな』と。地元の人たちに認めてもらうには、もっと違う方法があったのかなって反省しました。でもそれも実際に屋台に立たせてもらわないとわからなかったんですけどね」 岡崎がブンデスやプレミアの選手だった頃は、ショップの一日店長になってもやることは簡単だった。ニッコリ微笑んでファンとの2ショットに収まれば後はスタッフがやってくれた。だがバサラにおいては岡崎が戦略から調整まで全てに頭をひねることになる。日本人のクラブという特色を出すことと、マインツの小さな街に受け入れてもらうことを両立する方法を考えるのも今は岡崎の仕事なのだ。
【関連記事】
- 【続きを読む】「ハセさんと話すと、僕はやっぱり大きな組織は…」元日本代表・岡崎慎司(38)が観客134人のドイツ6部でオーナー兼監督になった“らしすぎる”理由
- 【写真】圧倒的なスターのオーラでナチュラルに目立ちつつも、人懐こい笑顔は全く変わらない岡崎慎司
- 久保建英でも、伊東純也でも、遠藤航でも、小川航基でもない…城彰二が「本当に強い選手」と称賛した森保ジャパンの“意外すぎる選手”とは?《W杯アジア最終予選》
- 中村俊輔でも、本田圭佑でもない…22歳で日本代表スタメン→「前半だけで交代」の挫折を味わった“世界的に有名な日本人選手”とは?《中村憲剛が解説》
- リバプール躍進の陰に天才学者? 大儲けの“悪徳代理人”に現れた天敵とは