高齢者の養子縁組、相続対策の一つだが注意すべきことがある 100歳時代の歩き方
子供のいない高齢者の相続対策の一つとして「養子縁組」がある。親子関係のない人同士が法律上の親子関係になることで、扶養義務や法定相続人として相続権が生じる。一方、法定相続人を増やすことで相続税負担を減らす「節税」を狙って養子を選択するケースもある。金銭が絡むだけに、いずれもトラブルを防ぐためには、事前に関係者や家族で話し合っておく必要がある。 80代の男性は3年前、50代のおいと普通養子縁組をした。1人息子を交通事故で亡くし、妻と2人暮らしになったが、「自分が死んだ後の遺産や事業などを考えると、養子がいたほうが心強いと考えた」。今は男性が所有するマンションにおいが住み、夫婦は都内の老人ホームで暮らしている。 養子縁組には、家庭環境に恵まれない子供の利益を守るための「特別養子縁組」のほか、相続人の確保や家の存続などを目的とした「普通養子縁組」がある。普通養子縁組は実親との親子関係も継続する。冒頭の男性のように、高齢者の相続対策としての養子縁組は後者に当たる。 特別養子縁組は家庭裁判所が決定するのに対し、普通養子縁組は一定の条件以外では養親と養子の合意によって成立する。所定の養子縁組届に記入し、本人確認のできる証明書などとともに、養親もしくは養子の本籍地または所在地の市区町村役場に提出すると手続きは完了となる。 普通養子縁組の手続きは決して難しいものではないが、武内優宏弁護士は「慎重に考えてから決めたほうがいい」とアドバイスする。養子縁組の解消は簡単ではないからだ。 武内氏によると、離縁には養親と養子の合意が必要で、合意できない場合、家庭裁判所の調停手続きとなり、調停が不成立となったら離縁裁判を起こす流れとなる。訴訟で離縁が許される事由は「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」などとされており、「期待していたほど面倒を見てもらえなかった」といった理由では認められないことが多く、長期化するケースもあるという。 武内氏は「養子縁組をした後で、自分が考えていた親子像と養子の対応にギャップを感じる高齢者は少なくない。不安が生じないよう、十分に考えておくべきだ」と話す。