高齢者の養子縁組、相続対策の一つだが注意すべきことがある 100歳時代の歩き方
■節税のために用いるケースも
普通養子縁組は相続人の確保が目的とされるが、節税対策としても利用されている。養子縁組で法定相続人の数を増やすことで、相続税の基礎控除額を増額するのだ。
例えば法定相続人が子供1人で相続遺産が5000万円の場合、そのままなら基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)は3600万円で、課税対象は1400万円だ。1人と養子縁組し、法定相続人が2人になれば、基礎控除額は4200万円で、課税対象は800万円と600万円減る。
相続税法上、法定相続人としてカウントできる養子の数は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までに制限されている。また、養子となった孫は相続税が2割加算される。
ただ、養子縁組によって法定相続人が増えるということは、もともとの法定相続人の相続分が減ることになる。ベンチャーサポート相続税理士法人(東京都中央区)の桑原弾税理士は「『養子縁組をしなければ、自分がもっと遺産を多くもらえたのに』と、家族間でもめるリスクがある」と話す。
相続対策の一つである生前贈与で昨年1月から、相続税の課税対象となる生前贈与加算が従来の相続3年前以降から7年前以降に延長され、節税効果が薄れたとされる。今後、養子縁組に関心が集まる可能性もある。
桑原氏は「養親となる人は、もともとの法定相続人にもしっかりと説明し、関係者すべてが納得した上で養子縁組を行えば相続トラブルを回避できる」と指摘する。(本江希望)