「宅配ボックス」ネット通販定着で需要増…住設メーカー販売強化「戸建て住宅には必須になるだろう」
住宅設備メーカーが「宅配ボックス」の販売を強化している。宅配便の数が急増している上、コロナ禍で「非接触」の受け取り方法として認知度が高まり、市場が拡大しているためだ。運送業の人手不足が懸念される「2024年問題」対策としても注目されており、国や一部自治体は補助金を設けて導入を後押ししている。(川口尚樹) 【グラフ】宅配便取扱個数の推移…20年で約8割増
福岡市で26日に始まった屋外用住宅設備の展示会では、大手メーカーを中心に戸建て住宅向け宅配ボックスの出品が目立った。
LIXIL(リクシル)は、今月発売した省スペース型商品などを展示した。シンプルなデザインで狭い場所にも設置できるのが特長で、受注はすでに計画の2・5倍以上という。
同社はコロナ禍前の18年に本格的に宅配ボックスの販売を開始。好調な売れ行きが続くため今年、ラインアップを4種類増やして計8種類とした。移川拓也・エクステリア商品開発部長は「普及率はまだ7%程度だが、戸建て住宅には必須の設備になるだろう。有望な市場だ」と話す。
パナソニックハウジングソリューションズが出品したのは、宅配便の受け取りだけでなく「発送」もできるボックスだ。デジタル技術を活用し、フリーマーケットアプリ「メルカリ」で送る荷物を入れておけば宅配業者がボックスの鍵を開けて引き取り、配送してくれるという。同社の宅配ボックスの販売台数はこの10年で5倍以上に伸びており、「新築住宅では標準仕様になりつつある」とする。
2商品を展示したユニソン(愛知県豊田市)の担当者も「住設商品で最も伸びているのは宅配ボックスだ」とするなど、各社の注力分野となっている。
宅配ボックスの需要が高まっている背景には、ネット通販やフリマアプリの定着がある。国土交通省によると、22年度の宅配便取扱個数は50億個を超え、20年で約8割増えた。
一方、運送業界では、荷物全体の約10%に上る再配達がドライバーらの長時間労働につながる一因とされる。国は再配達率の低減を目指しており、宅配ボックスがあれば不在時にも配達できることから普及への期待が高い。国交省は、住宅向けの一部の補助対象に宅配ボックスを含めているほか、山梨県など独自で補助金を導入する自治体も出てきており、宅配ボックスを巡る動きは今後も広がりそうだ。