自閉症の姉を持ち「発達専門」の小児科医になった女性 自分の子にも“発達特性”が発覚し決断した「新たな道」
姉が最重度自閉症だったことがきっかけで、発達専門の小児科医になった女性がいる。自閉症への理解がまだ進んでいなかった時代に、妹としてさまざまな「悔しさ」を感じ、医師を志して夢を実現させた。だが今度は、自身が出産した長男に発達特性があることが発覚する。現実が受け入れられず、泣きじゃくった日々を経て、女性は医師として、当事者の母として「新たな道」を歩み始めた。 【写真】医師になるきっかけとなった自閉症の姉らとの家族ショット * * * 発達専門の小児科医・西村佑美さん(42)。仙台市に育った西村さんは、2歳年上の姉が最重度自閉症だった。 時代は昭和で、インターネットもない情報不足の世の中。自閉症への理解もあまり広まっておらず、逆に「親の育て方が悪い」「愛情が足りない」などの偏見にさらされることもあった。西村さんの母親に注がれる視線も、例外ではなかったという。 「大変なお姉さんを持った、かわいそうな妹」「不幸な家族」 西村さん自身も、周囲の大人たちに勝手なレッテルを貼られた。本人の思いは、真逆だったにもかかわらずである。 「生まれた瞬間から姉と一緒ですから、私にとってはすべてが当たり前のことでした。自分がかわいそうだなんて思ったこともありません。会話はできませんが、姉はいつも自由にふるまって、キラキラしている。母が私より姉に目をかけるので、姉をうらやましいとも感じていました」 それでも周囲の大人たちは、「話しても何も分からない子ども」だと決めつけ、赤ちゃん言葉で姉に話しかける。 言い表すことのできない「悔しさ」を感じていた西村さんだったが、そこはまだ幼い子ども。大人たちから、姉は普通の人とは違うんだと刷り込まれるうちに、思春期に入ったころには、西村さん自身も「姉は自分とは違う存在」と思うようになってしまっていた。 「障害当事者と家族に、寄り添う医師になりたい」 そう決意したのは高校2年の時のことだ。 姉が暴れないように、主治医は鎮静剤を処方していた。眠気が強く出るため、姉が鎮静剤を嫌がっていると感じた母は、主治医に治療法を変えるように願い出たが、聞き入れてもらえなかった。 キラキラさを失った姉と、娘を守ることができず「情けない」と何度もこぼして苦しむ母の姿を、目の当たりにしたことがきっかけだった。