5度目の膝手術も“不屈の男”札幌MF深井一希、J1大逆転残留へ364日ぶりリーグ戦復帰「まだまだやれるところを見せたい」
[9.21 J1第31節 町田 0-0 札幌 Gスタ] 不屈の男がまたしてもJ1リーグのピッチに帰ってきた。昨年11月に負った右膝前十字靱帯損傷、右膝内側半月板損傷、右膝軟骨損傷の重傷を乗り越えた北海道コンサドーレ札幌MF深井一希は21日、J1第31節・町田戦で364日ぶりのリーグ戦出場。主将のMF宮澤裕樹に代わってピッチに立つ形となったため、キャプテンマーク姿で約50分間の復帰戦を過ごした。 【写真】森保監督、スプリンクラーから子どもを助けて猛ダッシュ 深井にとって膝の手術は自身のキャリアで左右合わせて5度目。軟骨移植というプロサッカー選手ではほとんど例のない治療法を選択し、「少しでも可能性のある限り復活したいという気持ちがあるし、そこから活躍するという強い気持ちでいます」(負傷後のインスタグラム投稿)という重い覚悟でリハビリに励んできた。 その結果、今月8日のルヴァン杯横浜FM戦で後半38分から公式戦復帰を果たすと、J1リーグ戦でも今節初めてベンチ入り。前半途中に負傷した宮澤が後半開始直後にプレーを取りやめたのを受け、0-0で迎えた同6分からキャプテンマークを受け継いでフィールドに向かった。 復帰戦のコンディションを考えれば、投入は早いようにも思われた。だが、今節はMF大崎玲央とMF荒野拓馬が揃って出場停止。一時は大差の最下位に沈んでいた状況から奇跡的な逆転残留を目指すチームを少しでも助けるべく、ピッチに立つことに迷いはなかった。 深井によると、町田対策のゲームプランも幸いしたという。「どちらかというとマンツーマンという感じではなく、相手が放り込んでくるぶん、セカンドボールとかスペースを見ながらで、自分としてもそっちのほうが持ち味を出しやすかった」。攻守がはっきりとした試合展開だったため、大きな負担はなかったようだ。 そんな深井の貢献もあり、札幌は首位を相手に敵地で無失点を貫き、勝ち点1を獲得。最後はGK菅野孝憲の負傷でGK児玉潤がJ1デビューを果たすというアクシデントにも見舞われたが、「みんなに切らさず集中しろと言い続けたし、僕もそうやって言うことで集中しないといけない。声だけは切らさずに声をかけながらやっていた」と集中力を切らすことはなかった。 コンディション面でも、結果という面でも上々の復帰戦。試合後、報道陣の取材に答えた深井は「自分としてもまだまだやれるところを見せたい。このケガで苦しんでいる人たちにとっては勇気づけられる久しぶりの出場だったと思う」と同じケガで苦しむサッカー選手たちの思いを背負いつつ、今後への決意を語った。 「今日みたいな試合で出た時に最低限勝ち点1、勝ち点3を取れるようにやっていきたい。こういう試合で途中から入って負けずに終われたというのは少なからず自分の価値を示せたと思うし、少しでも自分の力をチームに注げるように練習から頑張りたい」 目標はもちろんJ1残留。そのミッションは自身のためだけではなく、生まれ育ったクラブの将来を見据えた使命でもある。「このクラブは下に落ちると難しいのはわかっているし、だからこそJ1に居続けて、J1でやる意味がある。若い選手にとってはここからJ2に落ちるのか、J1に居続けるかで選手としての価値が変わってくる。そのために力を注ぎたい」。残り7試合で残留圏とは暫定勝ち点6差。不屈の男が直面してきた数々の苦難に比べれば、決して不可能な数字ではない。