【緊急取材】企業買収に潜む“詐欺師”を直撃 その巧妙な手口とは?
今回のテーマは、「緊急取材!企業買収に潜む“詐欺師”」。 超高齢化社会を迎えた日本。多くの中小企業の課題となっているのが、後継者不足だ。 そこで活発になっているのが、合併や買収といった手法、いわゆる「M&A」で事業を引き継ぐ動き。成功例も多くある一方で、買収した企業から資金だけを抜き取って失踪する“悪質な会社”も存在するという。内情を知る人間が明かす、巧妙な手口とは? いま、舞台裏で何が起きているのか。 【動画】《緊急取材》企業買収に潜む“詐欺師”を直撃 その巧妙な手口とは?
“ノーベル賞研究”を支えた会社が“M&A詐欺”の被害に
東京・杉並区にある雑居ビル。1978年に設立した「センシュー科学」は、研究機関で使う分析機器を製造・販売していた。従業員は30人ほどで埼玉県にある自社工場で製造し、コロナ前は年商8億円を超えたが、2020年度は約1422万円の赤字に。債務は約3億円に膨らみ、経営を圧迫していた。 社長だった山口千秋さん(76)は、「できる社員がよそに引き抜かれた。厳しい状況にコロナが追い打ちをかけた」と話す。 「センシュー科学」は、創業当時から山口夫妻が二人三脚で経営してきたが、4年前、妻・とよさんが認知症になってしまい、それが会社を売却する契機に。山口さんは「かみさんの病気を何とかしたい。私なりに満足できる介護をしたいということで、1日も早く会社を処分したいというのが本音。切羽詰まった状態だった」と振り返る。
そんな中、目に止まったのが、M&Aを活用した事業承継をうたうダイレクトメッセージで、同時期に数社から送られてきていた。山口さんが最終的に頼ったのが、「ペアキャピタル」という仲介会社。M&Aの仲介会社は、事業を売りたい企業と買いたい企業をマッチングし、交渉や手続きなどの支援を行っている。 2022年春。「ペアキャピタル」を通じて、「ルシアンホールディングス」という会社が、「センシュー科学を買いたい」と名乗り出た。わずか2カ月足らず、2022年6月に売却が成立。しかし直後から、「センシュー科学」の資金が引き出され、なんと1年半で倒産してしまう。 山口さんは「我々を餌食にして、いいところだけ取って逃げる。明らかに(彼らは)計画倒産。本当に地獄」と嘆く。