【緊急取材】企業買収に潜む“詐欺師”を直撃 その巧妙な手口とは?
いま、F氏の元には山のような督促状がきている。買収先企業の連帯保証人になっていたため、約3億円の債務を背負っているのだ。ヒロタ、カタヤマ両氏とは、連絡が取れないままだという。
仲介会社「ペアキャピタル」から「ルシアン」を紹介され、M&Aで会社を売却してしまった山口さん。「5、6回『ペアキャピタル』と会っているうちに踏ん切れた。あなたは奥さんのことで仕事を急ぎたいと言っている。私の会社は非常にスピーディーに仕事をやるから任せてほしいということで、『じゃあ頼もうか』と」(山口さん)。 「ペアキャピタル」担当者との打ち合わせには、田中哲社長も同席することがあったという。 これは、番組が独自に入手した買い手候補先リスト。「ペアキャピタル」が「センシュー科学」とマッチングさせるために作成した買い手候補の一覧表だ。 「検討中」としていた企業もあるが、大半は赤字体質の改善が難しいことを理由に、買収見送りの判断を下していた。100社近い候補が見送りの判断をする中、唯一買収に名乗りを上げたのが「ルシアン」だった。
当初山口さんは「ペアキャピタル」から、「『ルシアン』は東京駅前の八重洲の鉃鋼ビルに東京事務所を持っている、そこに信頼性がある。10社前後の会社を買い取ってうまくいっている。非常に優秀な会社」という説明を受けた。 そこで山口さんは、2022年6月16日、「センシュー科学」の全ての株を「ルシアン」に500万円で売却する契約を交わす。その条件として重要だったのが、連帯保証の解除という項目。これは、銀行からの借入金などを含めた山口さんの約3億円の債務を、「ルシアン」が引き継ぐことを意味していた。 しかし、会社を譲渡した翌日から、「ルシアン」は「センシュー科学」の資金を自社の口座へと移し替えていく。その額は、最初の月だけで2884万円。売却前、「センシュー科学」の口座には、当面の運転資金として6800万円以上の預金があったのだ。 山口さんは譲渡後も引継ぎのため会社に残っていたが、やがて資金は底をつき、今年1月に会社は倒産した。 「会社を買い取ってすぐつぶすというのは、いかにも詐欺。倒産の1カ月前から彼は電話にも出ないし、現在使われていませんというメッセージだけ。それも誘導したのは、やはり仲介業者。私は『ルシアン』より『ペアキャピタル』が憎い」。