【緊急取材】企業買収に潜む“詐欺師”を直撃 その巧妙な手口とは?
この「ルシアンホールディングス」の実権を握っていたのが、トップのヒロタ氏と幹部のカタヤマ氏で、ともに行方が分からなくなっていた。買収した会社から金を引き出し、消えた男たち……何があったのか。
企業買収に潜む詐欺!?…そのアジトで何が?幹部を直撃!
山口さんが会社を譲った「ルシアンホールディングス」の本部は、茨城・土浦市のビルの中にある。しかし、そのフロアは真っ暗で人けが無く、そこにF氏(30)が1人で現れる。F氏は「ここには僕がいて机だけがいっぱいあって、パートさんが4人いた」と、以前の状況を話す。 2021年ごろ設立された「ルシアンホールディングス」は、多い時で20人ほどの従業員が働いていた。F氏は「ルシアン」の代表取締役の一人だったが、会社の実権を握っていたヒロタ氏とカタヤマ氏から、買収した企業の経営を押し付けられていたという。 デスクには無造作に数種類の名刺が置かれ、異なる会社の全てにF氏の名前が。「名刺ができていることも知らなかった会社が結構ある」(F氏)。 飲食店を経営していたF氏は、知人にヒロタ、カタヤマ両氏を紹介され、「ルシアン」に入社。「ルシアンホールディングス」は「センシュー科学」を始め、業態の異なる企業を次々と傘下に収め、40社近くを買収したが、そのほぼすべてが、山口さんと同じような被害に遭っていた。
「会社から会社に対する送金をやっている。会社間の取引に見えるようにやっている」とF氏。取材班に見せてくれた「ルシアン」の預金通帳の一つには、ある会社から3000万円の振込が。傘下に収めた会社から「ルシアン」に資金が集められていたのだ。 さらに500万円の引き出しが2回も。「ルシアン」の通帳から、今度はヒロタ、カタヤマ両氏のプライベートカンパニーに流れていた。 別の銀行口座の記録を見ると、カタヤマ氏のプライベートカンパニーへ移した金の流れが残されていた。その額は合わせて5000万円。
F氏は社長のヒロタ氏から次に買収する会社の入金状況や預金残高の確認などを繰り返し命じられていた。 「ヒロタからしたら、お金がいくらあるのかというのは、宝探しみたいな感じ。どのタイミングでお金を抜けるかというのを、明確に知りたかったのだろう」(F氏)。