ビル8階に希少種のケナガネズミ 個体数回復で目撃増も「なぜここに?!」 奄美市
なぜここに?! 奄美・沖縄に生息する国の天然記念物ケナガネズミが25日、鹿児島県奄美市名瀬の市街地に現れ、住民を驚かせた。生息数の回復などで近年特に希少ネズミ類の目撃情報が増えているものの、今回見つかったのはビルの8階。住民らは「雨どいを伝って上ってきたのでは」「近くの山から電線を伝って入り込んだのかも」「まさかエレベーターを使った?」と首をかしげた。 ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄本島だけに生息する固有種。体長が20~30センチと国内最大のネズミの仲間で、背中の長い毛が名前の由来。尾は胴体より長く、先端側が白い。夜行性で主に木の上で生活し、木の実や昆虫類、カタツムリなどが主食。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。 発見したのは、このビルに住む鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センター奄美分室の牧貴大特任研究員(30)。同日正午ごろに外出先から自宅に向かったところ、エレベーターを降りたすぐ先にいたという。近づくと廊下の先に移動してじっと動かなくなったため、大和村の環境省奄美野生生物保護センターへ連絡した。 センターが把握している同市街地でのケナガネズミの捕獲・死体回収件数は2023年に19件、24年は11月末日現在で14件。マングースの根絶達成やノネコの防除事業が奏功しているほか、22年は山中のドングリが豊富だったことが理由として考えられるという。
同省の鈴木真理子希少種保護増殖等専門員は「ここ2年はドングリが少ないので個体数は自然に調整される見込みだが、餌を探して街に下りてくることがあるかもしれない」と話し「家屋に迷い込んだり、けがをしていたりと保護が必要な場合以外はそっと見守ってほしい」と呼び掛けた。 名瀬のビル内で見つかったケナガネズミは大きさから幼獣と見られる。到着した職員が捕獲を試みたが、網をかいくぐり逃走、雨どいのパイプの中に逃げ込んで姿が見えなくなった。ビルから山へ戻れなくなっている可能性もあり、同省は捕獲のためのかごわなを貸与。わなを受け取った牧研究員は「年内はビル内をパトロールする」という。 保護が必要なケナガネズミを見つけた場合は、素手で触らない、無理に捕まえようとしないよう注意が必要。連絡は自治体の教育委員会、または電話0997(55)8620奄美野生生物保護センターへ。
奄美の南海日日新聞