食の原体験、母乳を味わう美食の饗宴とは⁉
さて、実際にお料理を見てまいりましょう。まず、みんなを驚かせたのは1皿目に登場した「アマ」という料理。これはスペイン語で“お母さん”という意味ですが、見た目はおっぱいそっくり。シリコンで形成された胸の中に牛と山羊のミルクを混ぜたものが入っており、ちゅうちゅう吸いながらいただくというものです。 全体がほんのり人肌に温められており、赤ちゃんの肌着ををイメージしたガーゼに包んで手渡されるという演出も心憎い。国境や文化を超えて、誰しもが“生まれて初めて口にしたもの”、つまり母乳を再度味わうという得難い経験に一同興奮。「今日は何か素晴らしいものを味わえるぞ」という期待感に包まれました。
対して、井上勝人シェフは貝や筍など旬の食材を多く使い、メインの松阪牛のフィレに添えたのは京都産日本酒「伊根満開」の酒粕に包んだ赤米。食材に恵まれている京都ならではの魅力が存分に伝わってくる内容でした。
一方、ルカ・ファンティンシェフはイカスミのスパゲティや、イタリア産カロナローリ米のリゾットなど、イタリア人シェフとしてのアイデンティティを感じさせるメニュー。日本ですでに15年暮らしているルカさんですが、その成長ぶりをアドゥリスさんに見て欲しいんじゃないかな……なんて思ったのは私だけかしら。
この夜、全国から集ったグルマンたちが、スペイン人、イタリア人、日本人のそれぞれトップシェフたちによる美食の饗宴を堪能しました。
文・編集/秋山 都(Web LEON)