【高校サッカー選手権】東山が粘り強さを発揮!龍谷大平安はジャイキリ逃す
第103回全国高校サッカー選手権京都予選4回戦が10月20日に行われた。東山高校総合グラウンドでは東山と龍谷大平安が対戦した。 【フォトギャラリー】東山 vs 龍谷大平安 新人戦、インターハイと今季府内で2冠を獲得している東山に、昨年の選手権3回戦では同会場で京都共栄を破るジャイアントキリングを達成した龍谷大平安が挑んだ。試合は攻める東山、守る龍谷大平安という流れで進んでいく。 先制点は8分という早い時間に生まれる。東山はゴール正面でFKを獲得すると、右利きのFW山下ハル(3年)と左利きのMF古川清一朗(3年)がボールの後ろに立つ。直接ゴールを狙った山下のキックは相手選手に当たって阻まれるが、そのこぼれ球が古川の下へ向かうと効き足ではない右足を振りぬき、これが敵味方の密集をすり抜けてゴール左隅に決まった。 リードを奪った東山は、その後も主導権を握って攻撃を仕掛ける。4-4-2の布陣でサイドへ展開して攻撃参加したSBを絡めた仕掛けからクロスをゴール前へ供給したかと思えば、中央へクサビのパスを入れてFWがいいポジショニングから起点となって崩しを試みるなど、何度もゴールに迫る。対する龍谷大平安は自陣へ押し込まれる展開が続くが、4-1-4-1の布陣でしっかりとブロックを形成して対抗する。ゴール前へ攻め込まれる場面が多かったが、最後の局面では集中力を切らさず、身体も張る守備を見せて追加点を許さない。前半のシュート数は7対0と東山が圧倒したが、スコアは1-0で折り返した。 後半も同様の展開で幕をあけたが、龍谷大平安は少ないチャンスを生かすことに成功する。52分、ロングボールを相手がはじけなかったところからゴール前へ持ち込み、最後はFW西川大稀(2年)がドリブルでエリア内へ持ち込んで右足を一閃。これがサイドネットへ突き刺さり、同点に追いつく。さらに57分、左サイドから攻め込んで放ったミドルシュートが相手に当たってCKを獲得すると、そのCKをファーサイドでDF大津樹生(3年)が頭で叩きつけるシュートを決めて、なんと逆転に持ち込んだ。 5分間で試合をひっくり繰り返された東山だが、失点後には選手が集まって話し合い、反撃の姿勢を確認しあう。ベンチも選手交代でフレッシュな選手を投入してゴールを目指すが、前半から見せる相手の堅守をなかなか敗れない。64分には交代出場のMF沖村大也(3年)のロングスローからゴール前で混戦となるが、押し込めずに相手にクリアされてしまう。40分ハーフの試合の時計は進み、番狂わせが現実味を帯びてくる中、78分に東山が意地を見せた。右CKをニアサイドでそらしてゴール前へボールを送ると、最後はMF野田凰心(2年)が頭で押し込んで、終了間際にスコアを振り出しへと戻した。 延長戦はなく、勝負の行方はPK戦へ。ここで活躍を見せたのは東山GK麻生太朗(1年生)だ。先攻の龍谷大平安に対して、2人目のキッカーはシュート方向を読んでキックと同じ方向へ飛び、シュートを枠外へ外させることに成功。3人目のキッカーが中央へ蹴ったのに対して、麻生は横へ飛んでいたが残った足でシュートを防いで見せた。一方、後攻の東山は4人全員が成功させて試合終了。龍谷大平安が昨年に続くジャイアントキリングまであと一歩に迫ったが、東山が粘り強さを発揮してPK戦の末に準々決勝進出を決めている。 試合後、東山の麻生は「逆転されたときは『僕たちの方が練習量をやっていると信じているので、絶対に追いつける』という話をしました。最後に追いつけて、いい雰囲気でPK戦へ挑むことができました。PK戦は止める自信があったし、味方も必ず決めてくれると信じていました。1年生で試合に出させてもらっているので、ここで止めて次のステージに進むんだという気持ちでした」と試合を振り返っている。福重良一監督も「インターハイでもPK戦を経験しているので、気持ちに余裕がありました」と1年生GKを評価している。 劇的な同点弾を決めた野田は「少し焦りもあったので、追いつけてすごく嬉しかった。公式戦でのゴールはインターハイ予選の準決勝以来です。普通なら得点を決めた人のところに集まるんだけど、みんな応援してくれたメンバーたちの方へ走っていっていました(笑)」と振り返る。試合についても「引いて守ってくる相手もいるとは言われていたけれど、実際にそういう相手と戦ったのは初めてでした。今日は勝てたけれど、今後もこういう相手がいるかもしれません。逆転されたあと、本当ならゲームをコントロールすべきボランチが焦っていた。僕や雪本が落ち着いてボールを受けて、サイドへ展開したり、(相手の守備陣形の)間へパスを差し込んだりしなければいけなかった」とギリギリの勝利の中で感じた反省点を今後のゲームで生かす構えだ。 敗れた龍谷大平安は勝利まであと一歩だったが、リードを守りきることができなかった。セットプレーに強い東山を相手になるべくFKを与えないように、球際で相手に前を向かせないことを意識しつつもファールをしない守備を行っていたが、試合終盤は疲れもあり、相手への対応が少し遅れて来る中でゴール前でFKを与えてしまい、その流れから同点弾を許してしまった。 MF田中佑歩(3年)は「守備のライン設定もしていて先制点は奪われたけど、全体としてはやれていたと思います。ただ、そこからカウンターに出たときに攻撃の売僧が少なくて、なかなかチャンスが作れませんでした」と戦い方を評価する。自陣で守備ブロックを引いて守る分、攻撃では自陣から敵陣へと長い距離を走ってカウンターに出る必要がある。そこで苦労していたが、得点シーンでは「守備で引くだけじゃなくて、みんなでがんばって前へ出ることができました。そこからカウンターで刺せました」と勇気を持って戦ったことがゴールにつながったと話している。 川島友介監督は「対東山で『これしかない!』というプランを、選手が懸命にやってくれました。(守備の時間が長くなるが)どこかでチャンスを作れるとも思っていたし、あの強度の中でよくやってくれました」と選手の奮闘を称えていた。 (文・写真=雨堤俊祐)