中村時広・愛媛県知事に聞く(全文2)「地域の情報、見せ方を工夫」
第2子以降に紙おむつの無料配布を開始 子育て支援アプリも開発
もう一つ、流入についてですが、やっぱり働きやすい環境のサポートだと思うんですね。今の見える化もそうなんですが、愛媛県ならではにこだわっていまして、例えば2017年8月から始めたのは、県内に紙おむつの生産メーカーが、日本を代表するワン、ツー、スリーの会社全部が、本社ないしはマザー工場を持っているんです。一つの県にこの3社全てが拠点を持っているというのは、ほかにないんですね。 ここが着眼点だったんですけれども、県の若い職員からの提案もあって、ただ単に、県がお金を出して何かをしようとすれば、それはもう汗をかくことなくできてしまうんだけれども、それではだめだと。まさに、この愛媛県ならではの企業集積を生かした愛媛らしい事業をやろうということで、この3社に協力を求めました。
3社とも愛媛県で育ったところもあるので、恩返しの意味も込めて、ふるさとへの貢献をしたいということで、速やかに協力、要請に対してイエスの返事をいただいたんですけれども、協賛金を出していただきまして、それと県の事業を合体させまして、2017年8月からは、愛媛県内に住まわれている方は、2人目のお子さんが生まれた場合、1年間紙おむつ無料支給と。 ただしこの3社の製品のみが対象になるんですけれども、1年間完全無料支給という制度を立ち上げました。これはもう愛媛にそういった企業があればこそできた事業だと思っています。そういったことで多少の子育て支援をする。 あるいは、昔とライフスタイルが変わってきていますので、例えば大家族世帯が少なくなって核家族化が進んだり、夫婦共働きが進んだり、あるいは地域のコミュニケーションが希薄になったりという変化があるんですね。 何が昔と違うかというと、悩んだときの相談相手がいないんですよ。家の中で相談すればよかった、でも今はいない。隣近所に相談すればよかった、おつき合いがなくなっている。そうすると、例えば妊娠、出産、子育て、それぞれの段階で、若いお母さんが悩みを抱えたときに閉じこもってしまう傾向があるんですね。それを何とかしようということで、どこの県でも相談窓口の充実は図っています。 しかし、相談窓口をつくったからといってそれで解決するものではないと。なぜならば、今の世代にとっては、役所って敷居が高いんですよね。全然高いところじゃないんだけれども、あそこまで行ってねというところで、やっぱり閉じこもってしまう。 だとするならば、今の若い世代のライフスタイルを考えると、一番いいのはスマホだなと、タブレットだなと。じゃあ、そこで相談できる体制をつくり上げたらいいということで、「きらきらナビ」、名前をつけましたけれども、子育て専用の、相談支援アプリを開発しました。 これは、例えば、何月何日に子供さんが生まれましたと登録をしていただくと、自動的に、もうそこから1週間目にはメールが行きます。この段階では、こういうこと大丈夫ですか、気をつけてくださいねと。1カ月たったら、またメールが行きます。この段階では、こういうところはご心配ないですか、こういう症状はないですかとか、これはやりましたかとかいうメールがきめ細かく自動的に提供できるような仕組みになっているんですね。 もちろん個別の相談にも応じられる双方向のアクセスができるんですけれども、こうしたアプリケーションによって子育て支援をサポートしていくと、こんなこともやりながら、子育ての支援というのも実は人口減少問題につながっているという観点で充実を図っているところです。 ※中村時広・愛媛県知事に聞く(全文3)に続く