今年は巳年! ヘビに縁のあるクルマ - ACコブラ
2025年の干支は巳。巳年の始まりを記念して(?)、「ヘビに縁のあるクルマ」を何台か取り上げてみたい。今回は強烈な個性を持つアメリカ人が生み出したマッスルカー「ACコブラ」だ。 【写真】ACコブラのエンブレムはどんな図柄? 写真で確認
■ACコブラってどんなクルマ? 1960年代、フロントのエンブレムにコブラを配した「ACコブラ」というクルマが存在した。イギリスのACという自動車メーカーとアメリカのキャロル・シェルビーという人物が作り上げたマッスルカーで、もっとも有名なフォード製7リッターV型8気筒エンジンを搭載した「コブラ427」は、あまりのパワーから3速でもホイールスピンするほどのパワフルさを見せつけ、伝説的な存在となった。生産台数はおよそ350台から400台と伝えられる。他の排気量やエンジンチューンした仕様を加えると、ACコブラは全部で1,002台が作られたようだ。
では、ACコブラはなぜ生まれたのだろう。それにはキャロル・シェルビーのことを知る必要がある。 アメリカはテキサス生まれで、ブーツとカウボーイハットがトレードマークの人物。家業の養鶏場を経営しながら、仕事着の青白ストライプのオーバーオールを着たままサーキットに行き、レースに参戦したといわれている。その腕は確かで、1958年にはマセラティ、1959年にはアストンマーティンでドライバーを務めるほどだった。1959年のル・マン24時間レースではアストンマーティンで優勝。しかし、1960年には持病の心臓病が悪化し、レースからは引退した。 その後はレーシングコンストラクターとして「シェルビー・アメリカン」を設立する。ここから生まれたのが「コブラ」だ。イギリスのACカーズが販売していたロードスターに、フォードの4.2リッターV8エンジンを載せた最初のコブラは、ライトウェイトスポーツカーのシャシーにパワフルなエンジンを組み合わせた豪快な走りで大人気となり、レースでも活躍した。 ちなみに車名の由来だが、キャロル・シェルビーが以前から、自分が開発したクルマに「コブラ」と名付けることを夢見ていたからだと伝えられている。 実は、フォードのラインアップをさかのぼると「コブラ」という名称がちらほら見つかる。 シェルビーは1964年に発売となったフォード「マスタング」のチューニングも手掛けた。フォードがハイパフォーマンスモデルの開発をシェルビーに委ねたのだ。そんな関係もあって、コブラやシェルビーが手掛けたマスタングGT500というネーミングがマッスルカーのブランドイメージとして定着し、フォードのイメージリーダーともなっていったのだ。
■ 内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。
内田俊一