「野菜の味を引き立てる塩」と評判 研究員から漁師に転身 海底湧水使った塩を製造・販売
天橋立のある京都府の宮津湾を漁場にする漁師の男性が、湾内の海底から湧き出る地下水「海底湧水」を使った塩を製造販売して評判を呼んでいる。塩は海の調査や調理法の試行錯誤を経てできた苦労の結晶で、ミネラル分が多い塩に仕上がった。男性は塩を通じて「豊かな宮津湾に関心を持ってほしい」と語る。 【写真】宮津湾の海底湧水を使った塩を見せる本藤さん 水産関係の研究員から2010年に古里での漁師に転身した本藤靖さん(63)=同市漁師=で、天然トリガイやナマコの桁網漁やアサリの養殖に湾内で取り組む。漁をするうちに海底の泥に腐敗臭がないことに気付き、不思議に思っていた。10年ほど前に海藻の研究者に出会い、海藻などを育む栄養塩を含んだ湧水が海底から出ている可能性を指摘され、研究者や福井県立大とその存在を確かめた。 塩づくりは漁に出られない日の副業として始め、2年前に製造免許を取った。湾に浮かぶ養殖いかだ付近の水深12メートルから小型ポンプで海水をくみ上げ、煮詰めて塩にした。薪を燃料としたストーブなどで実験したが手間がかかり煙も出るため、灯油ストーブで特別な鍋を使って煮詰める方法にたどり着いた。 今春から本格的に船名をとった「要丸のsalt(ソルト)」として販売すると、市内外の飲食店や旅館の料理人から「野菜の味を引き立てる」などと高評価を得た。成分を分析すると、マグネシウムやカリウム、カルシウムのミネラルが豊富に含まれていることが分かった。 本藤さんは「地元の魚介類を地元の塩で食べるのもいい。宮津湾は山の栄養分が湧水として湧いてきて大きなトリガイが育つ。うまい塩がとれるきれいな海を守ることにつながれば」と願う。 塩は同市浜町の道の駅「海の京都 宮津」の直売所で30グラム入り550円で販売している。 (まいどなニュース/京都新聞)
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