なぜモーグルの堀島行真は予選の危機を乗り越え”涙の銅メダル”を獲得することができたのか…「あきらめたらダメ」
第2エアでは決勝から採用した高難度の大技コーク1080(軸をずらした3回転)を、着地を含めて完璧に決める。これまでの4本がすべて25秒台だったフィニッシュタイムは23秒86。息をのみながら合計得点の発表を待った。 果たして、減点を覚悟していたターン点は47.4と、5本の滑走のなかでは2番目に低かった。しかし、17.54を叩き出したエア点はスピード点とともに最高をマークし、予選1回目から尻上がりに伸ばした得点は81.48と最後の滑走で初めて80点を突破した。 2人を残した時点でトップに浮上。予選2回目に回った選手のなかでは、現行方式が採用されて3大会目にして初めてのメダリストになった直後にはガッツポーズも出た。 「第2エアが思ったよりも決まったので、ガッツポーズとともに……何て言うんですかね、ミスはしましたけど、自分の全部が出せたと思います」 今大会における日本勢第1号メダリストになった思いを堀島はこう振り返った。続くキングズベリーが82.18、伏兵のバルベリにいたっては83.23をマーク。メダルの色は銅に決まっても、男子のエースは安堵の思いを言葉に変換し続けた。 「嬉しいですね。やっぱり最低限3位で表彰台、メダルというところまで掲げて今回は挑んだので、それを達成できて本当によかったと思っています」 今シーズンのワールドカップ9戦ですべて表彰台に立ち、そのうち3度で優勝。通算71勝をあげている絶対王者で、五輪連覇を狙うキングズベリーに次ぐ世界ランキング2位を示すビブナンバー「2」を背負い、金メダル候補として2度目の五輪に臨んだ。 しかし、キングズベリーが貫禄の1位突破を果たした3日の予選1回目で16位にとどまり、一発での決勝進出を逃した。調子がよすぎたがゆえに第2エアで飛びすぎ、尻もちをつくほど着地が乱れたために、3つの得点すべてで減点を余儀なくされた。 波乱の船出にも、堀島は「飛びすぎない、という調整をしっかりとしていきたい」と心配無用を強調した。しかし、堀島本人の胸中は揺れ動いていた。フラワーセレモニー後のテレビインタビューで「予選の1本目からつらかった」と、偽らざる本音を明かしている。 「この舞台に上がってくるまで、このメダルとか、最低限こういう結果が残らないと自分が競技をしていられないんじゃないかと、ネガティブな気持ちが多くて。昨日もつらかったし、今日の朝もつらかったし、最後の1本を滑り切るまで安心できなかった。最後の1本でメダルが確定したときはホッとしたというか、安心した気持ちになりました」