統合失調症の姉を南京錠で監禁した両親。“家族という存在”を20年追い続けた監督の「真意」
統合失調症の症状が表れた8歳上の姉と、彼女を病気とは認めず、玄関に南京錠をかけてまで精神科の受診から遠ざけた両親の姿を20年にわたって記録したドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』が公開中だ。早くも話題を呼んでいる本作の藤野知明監督にインタビューを敢行。“どうすればよかったか”というタイトルに込められた想いなどを聞いた。 ⇒【写真】家族4人が並んでいるメインビジュアル
精神科医の立場からの解説は行わない
――非常に難しい統合失調症というテーマですが、精神科医や専門家の監修を受けたのでしょうか? 藤野知明(以下、藤野):私の姉は生きている間、自分が統合失調症だという認識はまったくありませんでした。そのため、この映像を発表するのは、姉の死後と決めていました。当初は未来の姉の医療に役立てるための記録として撮影していました。父親からは許可を得ていますが、母親からは許可を取っていません。一度、姉の主治医だった方の一人に、こういう作品を作りたいと直接相談したことがありましたが、趣旨に賛同していただけませんでした。他に適切な方は思いつきませんでしたので、精神科医の立場からの解説や検討は行っておりません。 ――冒頭に「この映画は姉が統合失調症を発症した理由を究明することを目的にしてはいません」「統合失調症とはどんな病気なのかを説明することも目的ではありません」などのテロップが出ますね。 藤野:私自身も精神科医や専門家ではないので、統合失調症がどういう病気かを解説することはできませんし、作品の目的もそこにはありません。これは作品を作る最初の段階で明確にしたことです。私が知る限りでは、統合失調症の原因はまだ解明されていないと考えていますが、「教育が悪かった」「本人の考え方に問題があった」という言葉を目にすることもあります。根本的に病気の原因がわからないのに、誰かの責任だなんていうことが言えるはずがないわけですよね。僕も素人なので、姉の一例しか知らないわけで、その範囲内で作ったものだということです。 もう少し言うと、「病気」というテーマにフォーカスした話になっていると思われがちですが、実際にはそのつもりはありません。僕としては姉のドキュメンタリーというよりも、姉が統合失調症を発症した後に、私や家族がどのように考え、行動したのかという家族全体のドキュメンタリーを意図していました。だからメインビジュアルも姉ではなく、家族4人が並んでいる状態なんです。