3代目トヨタ ヴィッツは市場が求める「よくできたコンパクトカー」に進化していた【10年ひと昔の新車】
“ネガ”な部分をつぶして、着実に進化した3代目
さて、アクセルペダルを踏み込んで走り出すと、CVT特有の加速感となるのだが、それが今までとはちょっと違う。1.3LのFFモデルではトヨタのCVTとしては初となるフレックスロックアップ制御を行っているのだ。 これは発進時にロックアップクラッチを積極的に作動させることで伝達効率を上げるとともに、エンジン回転上昇と車速のリニアリティを向上させるものだ。もちろんそれでもCVTであることにかわりはなく、発進時に限らず走り全般においてリニアリティに欠ける部分はある。 また、ハンドルの操作感やアクセルペダルの踏み込みに対するクルマの動きなどは全般に“軽い”印象だ。街中での走行はそれなりに快適だが、高速道路などではもう少し落ち着きが欲しい。 キャビンはホイールベースを50mm、そして全長を100mm延長した恩恵を十分に感じることができる。とくに後席はニースペースが35mm拡大されており快適性が向上している。またカーゴスペースの奥行きは145mmも長くなっている。6対4分割可倒式リアシートをワンタッチで倒せば、かなり広いフラットスペースができる。 スタイリングはどうだろうか。初代、2代代目のイメージを継承して、より躍動感を増したと言えるだろう。フロントマスクのデザインには、プリウスとの共通性もあり、トヨタの屋台骨を支えるモデルとして存在感をアピールする。 さて、全体的に見てこの3代目ヴィッツは従来モデルの“ネガ”な部分をとことんつぶして行ったという印象だ。そういう意味で着実に進化している。よく出来たクルマだと思う。 しかし、これがトヨタの将来を担う新時代のコンパクトカーかと問われれば疑問符が付く。まだ時期尚早、それは次の世代とトヨタは考えているかも知れないし、はたまた別の手段を講じるつもりなのかも知れないが……、初代モデル登場時のインパクトが大きかっただけにそう思う。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之/写真:井上雅行)
トヨタ ヴィッツ1.3 F“SMART STOP パッケージ”主要諸元
●全長×全幅×全高:3885×1695×1500mm ●ホイールベース:2510mm ●車両重量:1000kg ●エンジン:直4DOHC ●排気量:1329cc ●最高出力:70kW(95ps)/ 6000rpm ●最大トルク:121Nm(12.3kgm)/4000rpm ●トランスミッション:CVT ●駆動方式:FF ●車両価格:135万円(2011年当時)
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