フーディーも注目する魚沼の異色ファミレス、その「尋常ならざる」こだわり
「南魚沼産コシヒカリ井口農場」と書くと、全然違う。
――地元の農産物や伝統野菜を打ち出したメニューは、どうして造ったんですか。 小島:自分が戻ってきて大きく変えたのは、ここなんです。まず8年ほど前に、地元の農産物を知ってもらうために、地元の食材マップを造り始めました。というのも、せっかく心を込めて料理を作っても、食事が丸々残されて返ってくることもあるわけです。すごく悲しくて……。そのとき、「どういう食材かわかったら、興味を持って食べてくれるかもしれない」と閃いたんです。一番顕著だったのが、ハンバーグの付け合わせのフライドポテト。うちで使っていた雪室貯蔵のじゃがいもは、ふかしたときから甘さがあってすごく美味しいのですが、メニューには書いていないので伝わらない。ライスもうちは母の兄が作っているお米を使っているのですが、「ライス」と書くのと「南魚沼産コシヒカリ井口農場」と書くのでは、全然違う。知ってもらうことで、価格は一緒でも満足度は変わってくる、付加価値をつけられると思ったんです。 ――特に「天恵菇」を使ったメニューや商品開発で、メディアでも注目されていますよね。天恵菇を使い始めたきっかけを教えてください。 小島:天恵菇は、もともとしいたけ生産量ナンバーワンの徳島県で品種改良して造られた、全国でも10数件しか造られていない貴重なしいたけです。「山のあわび」といわれるほどの厚みからくる触感が特徴で、えぐみは少なく、ふつうのしいたけの3倍の旨味があるといわれています。唯一通年栽培している南魚沼の農家の存在を知って使い始めたところ、天恵菇を使ったお刺身などがお客さんに好評で。「持ち帰りたい」という声も多かったので、お土産用に商品開発を始めました。 市主催の商品開発セミナーへ行って自分達で一から作ったので大変でした(苦笑)。 天恵菇は栽培が難しいのに加え、少しでも軸が黒ずんでいたりすると売価が大きく下がってしまうのですが、商品には軸から上のみを使うことで規格外のものを高く買い、農家さんへ還元できるようにしています。 ――「山のあわび 魚沼天恵菇のお刺身」さまがざまな品評会でグランプリを受賞したり、「新潟ガストロノミーアワード」でも受賞されたりと、活躍がめざましいですね。 小島:2022年の美味アワードでは、最終審査員に修行先の日高良実オーナーシェフがいらっしゃるのを知って応募しました。コロナ禍でYoutubeを始めるなど頑張っていらしたシェフに「僕も頑張っています」と伝えたくて。それがまさかの全国1位の「グランプリ」に! また、新潟ガストロノミーアワード2023では特別賞「インフォーマル賞」、2024年には「若手シェフ部門30」にも選んでいただくことができました。