フーディーも注目する魚沼の異色ファミレス、その「尋常ならざる」こだわり
新潟県南魚沼市、上越新幹線の浦佐駅前に異色のファミレスがある。「小玉屋」だ。和洋300種類以上のメニューが揃い、しかもハンバーグは注文が入ってから成形、出汁も自家製というこだわりようだ。 創業100年弱続く老舗の同店は、「3世代が楽しめるファミリーレストラン」として、土日には長蛇の列ができる人気ぶり。地元のファミリー層のみならず舌の肥えたフーディーやトップシェフもこぞって訪れるという。 若き4代目小島雄介氏は、有名イタリアン「アクアパッツァ」グループで修業したのち家業に入った。以降、地元の農産物や伝統野菜を使用した新メニューの開発や、「山のあわび」といわれるきのこ「天恵菇(てんけいこ)」を使った画期的な商品作りで注目を集めている。地方のファミリーダイニングが生き残りをかけ、しかけた戦略とは――。 ■チェーン店と一線を画するこだわり ――小島さんはアクアパッツァグループで修業されたそうですが、これまでのキャリアについて教えてください。 小島雄介氏(以降、小島):実は家業を継ぐかわからないまま、漠然と「将来は食に携わるんだろうな」と近畿大学農学部に入り、奨学金で大学院まで行きました。それから改めて将来を考えたとき、「日々追求できる仕事をしたい」と料理の道に進むことにしたんです。 24歳からの遅いスタートだったので、好きだったイタリアンに狙いを絞って洋食専門の料理学校へ行き、アクアパッツァグループで3年修業してから地元に戻ったのが2012年です。65歳になる父も現役なので、今は和食メニューを父、洋食メニューを僕がメインで作っています。親子で店をやると揉めるという話も聞きますが、うちはすみ分けができているので、喧嘩することはほぼないですね。 ――ファミレスとは思えぬ「異様な」ほどのこだわりには驚きます。メニューも多くて、目移りしてしまいます。 小島:メニューのベースは現社長である父が作り、僕が戻った後に洋食メニューを増やし、レシピも改良していきました。開業当時は観光客向けの食堂やお土産をやっていたのですが、上越新幹線開業と共に浦佐駅東口へ移転し、業態もファミリーレストランへ変えたんです。大きな決断だったと思います。 出汁が自家製なのは父の代からのこだわりで、和食やラーメンで使う出汁はすべて引いています。いまは移転後40年続くグランドメニューから和洋、地元に特化したメニューやお酒のつまみ、キッズメニュー、宴会コースやテイクアウトもやっています。 ――ハンバーグは注文を受けてから成形して焼いているとか……。 小島:はい。通常のハンバーグはオーダーが入るたびに成形して焼いていたのですが、お子様ランチのハンバーグに関しては元々煮込みハンバーグだったんです。お客様のご指摘から、お子さまランチも注文ごとに成形して焼き始めました。 その他にも、タリアテッレやカルボナーラなどパスタメニューを増やしたり、ピッツァを窯焼きに変えたり。元からあるメニューも、レシピは大きく変えなくても、仕込みを少しずつ変えています。デミグラスソースも、お肉や野菜を5時間煮込んで作っています。