【ゆるく繋がる地域の《居場所》】「本は孤独の味方。中距離コミュニケーションの場」高齢者だけでなく、世代を超えて繋がるブックカフェ<兵庫県豊岡市「だいかい文庫」>
不安や心配ごとを共有できる仲間が近くにいたら、どれだけ心強いか――。ご近所同士で助け合える場を自ら作り、そこに集う人たちはどんな関係を築いているのだろう(撮影:霜越春樹) 自宅の空き部屋を開放し「おしゃべり会」を開催 * * * * * * * ◆<兵庫県豊岡市「だいかい文庫」> 人との出会いは繋がりの貯金 高齢者だけでなく、世代を超えて繋がる場所が兵庫県豊岡市にある。2020年にオープンした図書館兼ブックカフェの「だいかい文庫」だ。館長の守本陽一さんは31歳の若き医師。 「私が高校時代に母が急逝してつらかった時、寄り添ってくれた家族や友達に感謝すると同時に、どんな人でも受け入れてもらえるコミュニティが必要だな、と思ったのが始まりです」 医師となり、さまざまな環境に置かれる患者と向き合ううち、孤独や生きがいのなさなど病院では解決できない課題に直面。よりいっそう、その思いは現実味を帯びていく。 そんななか、「孤独はうつ病や依存症の発症リスクを高め、寿命を縮める大きな要素」といった研究データや、イギリスの医師の「薬でなく、人との繋がりを処方する仕組み『社会的処方』が急務」という論文に心から共感したという。 「私は、本を『孤独の味方』、図書館を、司書や利用者との何気ない会話など、他者とのゆるい繋がりを感じられる『中距離コミュニケーションの場』と捉えています。だから、地元に図書館を作ることにしたのです」
館内に並ぶ本は、月額2400円で棚の一角を所有できる「一箱本棚オーナー」のお薦めのものだ。オーナーは現在、10~70代の約90人。職種はさまざまで、外国人や法人というケースもあるため、本のジャンルは多岐にわたる。 「本の貸し出し時に感想カードをお渡しするのですが、それが貸主と借主の橋渡しとなり、交流が芽生えることも少なくありません」 図書館は、最初に登録料300円を支払えばいつでも利用可能。公共の図書館とは違い、過ごし方は自由だ。併設するカフェで飲み物を購入して勉強するもよし、隣席の人と談話するもよし。ボランティアの店番と会話に勤しんでもかまわない。 また週に2回、医療福祉の専門家が心身の健康相談を受け、必要に応じて有効なコミュニティなどを紹介する「居場所の相談所」が開かれる。病気や人間関係などの悩みを抱える人たちが訪ねてくるという。 安藤有公子さん(64歳)も、だいかい文庫を利用するひとりだ。5年前、約40年過ごした東京から実家のある豊岡市に戻った。 「本に関わる仕事をしてきたこともあって、人づてにここのオープンを知り興味を持ちました。すぐに利用者登録をし、『本棚オーナー』になり、月1回のペースで店番もしています」 間もなくして両親が次々と要介護の身になったという安藤さんだが、だいかい文庫でいくつかの出会いがあったという。
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