テニス界のシンボル、フェデラーは来季復活できるのか?
■2013年の大スランプ 元王者ロジャー・フェデラーの苦しいシーズンが終わった。ロンドンで開催されたツアーファイナルの準決勝で、5歳下のライバルであるラファエル・ナダルに敗退。これが今季最終試合となった。 フェデラーといえば、2004年のウィンブルドンからグランドスラムで史上最多の通算優勝記録17度を積み上げ、09年の全仏優勝で生涯グランドスラムを達成、世界ランク1位在位記録302週など数々の記録を築いてきた。強さだけではなく、オールラウンドの華麗なプレースタイルと温厚なコートマナーで世界的な支持を獲得し、ナダルやノバク・ジョコビッチを牽引する形で史上最強時代を形成、テニスの繁栄拡大を担ってきた、いわば「セイント(聖人)」である。 ところが、32歳になった今シーズンは、グランドスラム優勝どころかツアー優勝は1大会だけにとどまった。それもツアーの中では一番下のカテゴリ-の大会だ。故障のないことがフェデラーの特徴だったとはいえ、いつも抱えてきた背中の痛みは悪化の頻度が増えた。若手選手や格下選手に敗れることが再三となり、昨年優勝したウィンブルドンでの2回戦敗退によって連続ベスト8の記録が35大会で途切れ、世界ランキングは7位までダウン。全米オープンも4回戦で、過去10戦10勝だったトミー・ロブレドにいいところなくストレート負け。その後も不振は続き、上位8人で戦われるシーズン最終戦の「ツアーファイナル」出場が危ぶまれたほどだ。 冒頭で触れた通りなんとか出場は果たしたが、ようやく出場権を確保したのは開催の前の週のことで、さぞや大会関係者もやきもきしたことだろう。フェデラーの存在はテレビ放映や券売にも大きく関わるはずだ。近年はジョコビッチやアンディ・マレーが安定した力を発揮し、ミロシュ・ラオニッチや錦織圭などその下の世代も育ってきてはいるが、まだまだフェデラー、あるいはフェデラーVSナダルが築いたライバル時代の輝きとは大きな差がある。 ■21世紀のテニス界のシンボル的存在 フェデラーは、21世紀に入ってからのテニスマーケット拡張のシンボルだった。中国を頂点にした秋のアジアシリーズの定着や、南半球で関心の薄かった全豪オープンの充実はフェデラーのカリスマ性をテコとし、母親が南アフリカ出身ということもあってアフリカへの普及にも尽力した。