テニス界のシンボル、フェデラーは来季復活できるのか?
フェデラーのイメージがあればこそ実現できたことだ。今年の全米オープンの優勝賞金は2億5000万円に跳ね上がり、アメリカ・カナダシリーズのボーナスを合わせると獲得賞金は最大3億5000万円。ゴルフでもこれほどの額は動かない。この10年、フェデラーが牽引してきた男子テニスのレベルの高さと人気の高騰が賞金にも反映されていることは紛れもなく、世代と性差を問わずに熱い支持を持つフェデラーの動向は、巨大マーケットであるテニス界全体の浮き沈みにかかわる問題といえるだろう。 ■テニス選手にとって重大な冒険 いつかラケットを置く日は来る。その「いつか」がいつなのか、事あるごとにメディアが探りを入れる中、夏にラケットのスペックを変える試みを行なったことは、テニス通なら知っているはずだ。10年以上も変えなかったヘッドサイズをウィンブルドン後にひとまわり大きくし、それを全米オープンではまた元に戻している。「まだ試行錯誤。これからも変わるかもしれない」と話していた。 腕の延長であるラケットを変える決断は、テニス選手にとって極めてデリケートで、契約変更の際にはわざわざ1年の猶予期間を設けることもある。にもかかわらず、あの微妙な時期に、周囲の不安をヨソになぜフェデラーはそんな冒険をやっていたのだろうか? ■ラケット変更の理由とは フェデラーのテニスは、パワーやスピードが中心ではない。高いテクニックとすぐれた〈タッチ〉のセンスにパワーとスピードを組み合わせた総合美だ。だから、加齢とともにそれぞれ少しずつ衰えたとしても、まだトップレベルでプレーを継続できるという確信があるのだ。ラケットの変更は、目先の結果ではなく、長くトップ10で活動するための環境づくりだったに違いない。 トッププレーヤーに対して出場大会など細かなノルマを課しているATPも、そのノルマから免除される選手の条件を定めており、それはまるでフェデラーに無理をさせないためのルールのようだと言われている。