香港映画界の次世代俳優テレンス・ラウが語る、香港No.1ヒット作の魅力
ソファに横たわって、天井を見上げるのが好き
――繊細でアーティスト気質な印象のテレンスさんですが、『男たちの挽歌』や『欲望の街/古惑仔』シリーズに登場するようなワイルドな男性像に憧れたことは? もちろん、幼いときは家族と一緒に、そういった香港のアクション映画ばかり観ていましたし、どこかで憧れのようなものありました。でも、年齢を重ねていくうちに、メイベル・チャン監督の『誰かがあなたを愛してる』やピーター・チャン監督の『ラヴソング』、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』といったアート系の作品の方が好きになりました。そして、香港演藝學院に進学してからは日本や韓国、ヨーロッパのアート系作品を多く見るようになったんです。 ――香港映画界において、歴代観客動員数第1位のメガヒットを記録した『~九龍城砦』ですが、この社会現象をどのように捉えていますか? まさに、香港を代表する作品になったといえるでしょう。この映画の舞台となった九龍城砦は現存していませんが、この映画では、そこで貧しくとも強く逞しく生きていた住民の人情や絆が描かれており、外部からの攻撃により、それをどのように守っていくか? という話でもあります。それは過去の香港の姿であると同時に、今の香港の姿でもあり、世の中にとって普遍的なテーマではないか? と思っています。 ――テレンスさん自身も、「全民老公(香港の国民的夫)」と呼ばれる存在になりました。 なりたくてもなれない存在だと思うので、そこまで言っていただけて、とても光栄です。とはいえ、僕自身かなり内気な性格なので、恥ずかしくもあります。オフの日は、できるだけ家に引きこもって、本を読んだり、映画を観たり、あとは疲れたときにはソファに横たわって、ずっと天井を見上げて、頭の中を空っぽにするのが大好きなんです(笑)。
クリエイティブな仕事を自由自在にやっていきたい
――最後に、今後の展望や憧れの存在を教えてください。 先ほども言いましたが、クリエイティブな仕事を自由自在にやっていきたいです。それは俳優業に限ったものではなく、歌うこと以外なら何でも。実際に脚本も書いていますし、いつかは監督業もやってみたいと思います。憧れの存在は、大好きな『オアシス』を撮ったイ・チャンドン監督。極限状態まで追い込まれた人間の姿を描くことで、常に生きることについて探求しており、作品全体に力が満ち溢れているんです。僕はそこに強く共感するんです。 テレンス・ラウ(劉俊謙) 1988年9月26日生まれ。香港出身。12年、香港演芸学院戯劇学院を卒業。舞台俳優の道に進んだ後、16年からTVドラマに出演。19年、主演作『夢の向こうに』で映画デビューを果たし、21年公開の『アニタ』ではレスリー・チャン役を演じている。24年に公開された台湾映画『鯨が消えた入り江』がNETFLIXにて配信中。 映画『贖罪の悪夢』 精神科医のマン(テレンス・ラウ)のもとにやってくる患者は、自身の不安やトラウマからくる悪夢に苛まれていた。患者の一人、不眠症で事故を起こしたタクシー運転手のチョイ(ニック・チョン)をカウンセリングしたマンは、チョイの悪夢は、金融危機時代、友を裏切った罪悪感によるものだと分析する。 映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』 1980年代の香港。“悪の巣窟”と呼ばれる無法地帯、九龍城砦を取り仕切るロンギュンフォン(ルイス・クー)は、黒社会の大ボス(サモ・ハン)とトラブルを起こした不法移民のチャン(レイモンド・ラム)を匿い、彼を信頼する弟子である信一(テレンス・ラウ)らに託す。その結果、九龍城砦は激戦の場となる。 2025年1月17日(金)、新宿バルト9ほか全国ロードショー
くれい 響