なぜ「子持ち様」はドイツにいないのか? (東福まりこ キャリアコンサルタント)
■ジョブ型雇用では休みのフォローをどうするか
冒頭で「ドイツに子持ち様現象は見られない」と伝えたが、ではドイツ企業では休みの社員のフォローをどのように行っているのか。 日本のメンバーシップ型と異なり、海外では業務内容が明確に決められている「ジョブ型雇用」が一般的だ。個人の責任範囲が明確に決められているため、上司の指示なしに、当人の了解もないまま同僚が協力して手伝うことはない。 私が働いていたドイツ企業の本社でも同じだ。 ドイツ人は夏・冬それぞれ2~3週間の長期休暇をとる。その間、仕事はストップする。そこで休暇の2週間前には上司に承認をとり、関係者に休暇の時期を連絡する。連絡を受けた側は、休暇後では遅いと思われる仕事は前倒しするなどしてスケジュールの調整をする。 3週間の休暇は普通なのに、ある同僚は「自分は2週間にしている」と言う。「どうして?」と聞いたら「3週間も休んだら、メールと書類が山積みで、休暇明けに大変な思いをする。2週間ならまだ許容できる」と答えた。日本でありがちな「休むと周囲に迷惑がかかるから」の発想はない。 休暇中、関係者なら休暇の情報は事前に得ているからいいが、不在を知らない人が問い合わせしてきた場合はどうなるか。必要があって他部署の面識のないAさんへメールしたところ、休暇で3週間後の出社だとわかった。同じプロジェクトチームの同僚へ伝えたところ彼の答えは「仕方がない、待とう」。自分も休暇はとるからお互い様で、文句は言わない。 夏の休暇は7月~9月に分散されるからまだましだとしても、冬の休暇はクリスマス時期に集中する。そのため、12月の第2週から月末まで仕事は停滞するが、休暇は労働者の権利で、クリスマスは宗教行事でもあるので自然に受け入れられている。 このようにジョブ型雇用の環境では、理由は何であれ、急に休んだ人の仕事はそのまま残され、翌日その人が頑張ってやる。だから同僚が不満をためたり、休んだ本人が「迷惑をかけてしまった」と肩身の狭い思いをしたりはしない。