寝る前の「1杯のアルコール」が睡眠の質を低下させる!? 脳の健康にもリスクがあった…米国の研究結果で明らかになったこと
飲酒と寝不足の関係性は十分実証されている。お酒には一時的な鎮静作用があるけれど、飲むと睡眠時間が短くなって、いびきをかく可能性が高くなり、翌日は昼間から眠くなる。それだけではない。米国睡眠学会誌『Sleep』に掲載された研究結果は、アルコールを摂取すると、レム睡眠(適切な精神機能に必要とされる種類の睡眠)の時間が著しく減少するため、睡眠の質が低下することを示している。 【写真】ビールやワインは?「肌が汚くなる」お酒のワーストランキング 睡眠ラボで実施された同研究には36名の成人が参加して、就寝の約1時間前にアルコール飲料かノンアルコール飲料のいずれかを摂取した。また、この研究は計2回、いずれも3夜連続で行われた。 そのデータから研究チームは、アルコール飲料を摂取すると、ノンアルコール飲料を摂取したときに比べて参加者のレム睡眠が著しく減少することを突き止め、寝る前の飲酒は仮に少量でも睡眠の質に悪影響を与える可能性があると結論付けた。 また、3日目の夜までに参加者の体がアルコールに適応することもなかった。よって、毎日寝酒をしていれば、いずれ体が慣れるということはありえないと研究チームは指摘している。 レム睡眠が不足すると(それが慢性化した場合はとくに)、脳の健康が大きなリスクにさらされる。レム睡眠は、記憶の固定と感情の処理に必要なだけでなく、私たちが夢を見るステージでもある。同研究チームの話では、そのレム睡眠に被害が及ぶと、感情面の問題や記憶力と集中力の低下につながる可能性があるという。 飲酒とレム睡眠不足の関係性が指摘されたのは今回が初めてではない。前述の米国睡眠学会が発行する別の専門誌『SLEEP Advances』に掲載された2022年の研究では、飲酒のような行動の影響を36年間にわたって追跡した結果、控えめな飲酒でも睡眠の質に悪影響を与えうることが分かった。 つまり、睡眠の質が低い場合は、お酒を完全にやめるべきということ? 米プロヴィデンス・セント・ジョン・ヘルスセンターの一般外科部長で腫瘍外科医のアントン・ビルチック医学博士によれば、必ずしもそういうわけではないけれど、飲酒量を減らしたり一時的な禁酒期間を設けたりして、睡眠の質がどのように改善するかをチェックしてみる価値はある。 「アルコールが健康上のリスクを高めるのは確かですが、飲酒を含め、私たちの行動は結局のところトレードオフの関係性にあります」とビルチック博士。「それゆえに、何事も平均寿命と健康寿命に照らし合わせて行わなければなりません。とりわけ、飲酒のような特定の行動が自分に与えている影響を意識して、そのインサイトに基づいて行動を変えていくことが大切です」 ※本記事は、アメリカ版『Runners World』からの翻訳をもとに、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。