NBAを目指す富永啓生が語った決意 Gリーグ所属チームのHCに聞く苦闘の理由
【新たな決意を持って挑む2025年】 ここまでは、厳しい現実を突きつけられている。富永のシュート力を高く評価していた渡邊雄太(現・千葉ジェッツ)はかつて、「啓生は基本的にはシューター特化でいい」と話してはいた。それと当時に、「まずディフェンスは最低限うまくならなければいけません」とも述べていたのが忘れられない。 少なくとも現状では、富永の守備力はプロレベルでの"最低限"に到達していないということだ。本来であればポイントガード(PG)の高さと言える188cmという身長でシューティングガード(SG)のプレーをする富永にとって、守備面が出場機会を得るうえでの致命傷になっている。 「もちろんディフェンスは、自分が一番成長しないといけないと思っています。慣れが大きいのと、あとはフィジカルな部分。その部分でアピールしていかないといけないですし、練習中からやろうっていう意志は出しています」 守備面の向上に関して、そう述べていた富永だが、もともと苦手だった分野で今後、どれだけ改善していけるか。 ハンキンスHCが「ウェイトトレーニングは必要だ」と話すように、フィジカル強化は必須。その上でポジショニングの大切さを理解し、チーム戦術のなかで有効に動けるようにならねばならない。 ルーキーとしてはもう若いとはいえない23歳という年齢で、これから大きく進歩するのは容易なことではない。ただ、それをやり遂げなければ、世界最高峰の世界では生き残れない。相当な覚悟が必要ななか、少なくともアメリカでのプロキャリアという意味では、富永は早くも正念場を迎えているのだろう。 現地1月3日に発表されたGリーグ・オールスターゲームのファン投票で、富永は5位にランクイン。プレー機会が増えないなかでも変わらぬ根強い人気は、そのプレースタイルと爆発力の魅力を物語る。カレッジ時代も1年目は出場機会の確保に苦しんだが、2年目以降は"和製ステフィン・カリー"と称されるような、確実な成長を見せた。そんな選手だからこそ、この苦境を脱することを多くのファンが望んでいる。 「すべての面でレベルアップして、試合に出られるように頑張ってやっていかなきゃいけません。選手として、もっともっとレベルアップしていけたらいいなと思っています」 新たな決意を持って迎える正念場。今から1年後、2025年を振り返った時に、去年と同じように、「いい経験ができた」と振り返ることができるような年になることを願いたいところだ。
杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke