Reライフ.netインタビュー 武者小路千家の若宗匠・千 宗屋さんが教える 新年に始めたいこと 『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』(小学館)を出版
――昨年秋に発売された著書『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』では、人間関係を円滑にするためのふるまい方やマナーをまとめています。
この本の前半では、周りの人から信頼され、人づきあいの悩みを少なくする「6つの基本の思考習慣」を紹介しています。 ①相手の気持ちを「慮(おもんばか)る」 ②神仏や自然、他者を「尊ぶ」「敬う」 ③自然の恵み、他者に「感謝する」 ④ 心の内より「きれい好き」に ⑤「ご縁」を大切にする ⑥「わが身」に置きかえる なかでも「②神仏や自然、他者を尊ぶ敬う」は、現代の日本の生活に少し欠けていると思っていることです。かつては家の中にも仏壇や神棚、床の間など、自分のままならない、恐れを知る空間がありました。 生活習慣のなかで神仏や先祖、自然を尊び、敬う気持ちが根付いていると、何か考えたり行動したりするときに自分だけよければいいとか、自分が一番偉いという考えにはなりません。周りの人や自然の恵みがあって自分が生かされていることを自覚すると、自分の中に慎み深さが生まれ、ちょっと一歩引くことを自然に覚えていきます。 昔の日本人はそれが自然に身についていましたが、今は家族の在り方や生活環境などが変わってきたので、相当意識しないとできなくなりました。 本の後半では、実践として様々な場面でのマナーを紹介しています。 人はそれぞれ考え方や思考、生まれも生い立ちも違って、十人十色です。そういう人たちが一緒に行動したり、同じ場を過ごしたりするとき、お互いに居心地良く過ごすために、共通のルールや作法があればまとまりやすくなります。 これらは型どおりにやることを目指すものではありません。一番大事なのは、臨機応変な応用力です。経験を積み重ねて臨機応変にできるのが「大人のふるまい」ですが、その応用力を鍛えるためにはまず基本を知らないといけないので、それを紹介しています。
――マナーや作法について改めて学ぶ場は限られていますが、大人になって年を重ねてから学ぶことの意義や、見直し方のおすすめはありますか。
還暦になると、ゼロになって赤ちゃんになって生まれ変わると言われます。それを機に何か新しいことを始められるのは、すごくいいことだと思います。 マナーや作法の活かし方を学ぶ場として、私は茶道を一番おすすめします。そもそもお茶はコミュニケーションツールです。普段はばらばらの人が、4畳半の薄暗く狭い空間で、膝をつき合わせてお茶を一緒に頂くことで、同じ空間や同じ香り、同じ物を見て感じ、一体感を得る。それがお茶の大きな目的です。 一体感を得るための近道としてルールや作法があります。そこにはお互いが居心地よく過ごし、ばらばらの人がまとまるための知恵がつまっています。 会社で役職に就いているともう怒られることもないかもしれませんが、茶道は入門順なので年下の人に注意されることもありますし、非日常の場なので社会的地位などとは別の世界です。 戦国時代、織田信長や豊臣秀吉はそれをよく知っていて、信長は人心掌握にもよく使っていました。お茶の前では、みんなが平等になるという機能が今でも残っているので、別の人間として生まれ変わって学び直しができ、感覚的な若さを保つことができると思います。