井上拓真は18人兄弟の正規王者ウーバーリに勝てるのか?
WBC世界バンタム級暫定王者の井上拓真(23、大橋)と統一戦(7日・さいたまスーパーアリーナ)を行う正規王者のノルディ・ウーバーリ(33、フランス)が1日、東京・新宿区の帝拳ジムで公開練習を行った。元WBC世界スーパーライト級の世界ランカーだった兄のアリ・トレーナー(42)と共に現れたウーバーリは、18人兄弟の13番目で格闘一家であることを明らかにした。拓真の父の井上真吾トレーナーは、「兄弟の数で1ポイントとられた分、最初のラウンドで取り返す。家族同士の戦いなら負けられない」とやり返した。動きを見る限り、16戦無敗のキャリア通りの強敵。拓真の真価が問われる統一戦となる。
チェスのように理詰めで戦う
よく喋った。練習前のインタビューはフランス語の通訳を介したこともあって約40分。 だが、公開練習の方は、「モスクへの礼拝に向かいたいから」と、軽いシャドー、ミットをそれぞれ1ラウンドだけ。こちらは、わずか6分間だった。 兄の持つミットに、ジャブ、ワンツー、フックと、持てるパンチをダッキングを入れながらすべて打ち込んだが、そのスピード、テンポ、そしてバランス共に、元トップアマの土台を感じさせる素晴らしいものだった。 大橋秀行会長は写真撮影で脱いだ際の肉体に驚いていた。 「上背はないが、凄い体をしていた。サラブレッド馬のように血管が腹筋に浮かびあがっていた。相当練習をしてきている。動きを見ても、まったくぶれない。バランスがいい。それほど体幹が強いということだろう」 カザフスタンで3週間のキャンプを積んで来日した。拓真に似たタイプのボクサーとも行い、日本に似た気候の中での万全の調整。初来日だが、アウェーに苦手意識はないという。 「これまでほとんどが海外。フランスでも地元以外のところでやってきた。アウェーは逆に好きな場所だ」 北京、ロンドンと2度五輪出場を果たしている。北京五輪では、中国の国民的英雄のゾウ・シミンに僅差の判定で敗れた。判定に不満があるようで、「最近は、IOCの圧力でだいぶ良くなってきたが、当時、彼らは汚職にまみれていた」と、プライドをのぞかせた。 2007年の世界選手権では銅メダルを獲得、プロでは、まだ16戦だが、アマ戦績は200戦以上あるエリートである。 「やる気に満ちている。早く試合をして自分が一番強いことを証明したい。拓真はいいボクサーだ。よく動くし速さもある。彼を軽くは見ていない。あらゆるシナリオを用意している」 兄のアリは、ビデオなどの映像を研究してきたようで「詳細は言えないが拓真の長所も短所もわかっている。弟は知的なボクサーなのだ」と意味深な発言をした。 「知的なボクサー」は、どんなシナリオを用意しているのか? そのことを聞くと「前へ出る。或いは待つ、などシナリオはたくさんあるが、オレの特徴は、相手に合わせ臨機応変に戦うこと。前へ出ても、引いてもパンチを当てることができるんだ。人は、オレをチェスプレーヤーのようだとも言う。先読みして、変幻自在に動ける。井上拓真が、どんな出方をしてきても大丈夫だということだ。判定だろうが、KOだろうが関係ない。こだわりはない。勝ち方より勝つことが大事なんだ」と答えた。